もう1つ注意しなければならないのは「守秘義務」に反する行いだ。

そもそも社員は、使用者(会社)に対して「雇用契約上の誠実義務」を負っている。在職中は職務を誠実に遂行し、情報漏洩などで会社に損害を与えてはいけない。この義務が退職後も継続するかどうかについては争いがあるが、「少なくとも退職後の守秘義務を誓約すれば、転職禁止特約とは異なり、当然有効であると解されます」(石井弁護士)。


転職・再就職時に落とし穴となる「2つの義務違反」

また、在籍していた会社の顧客データ、その会社が持っているノウハウや技術情報など、いわゆる企業秘密に属する情報を漏らすと、「不正競争防止法」違反で裁判を起こされ、販売停止や商品廃棄などの「差止」や「損害賠償」などを請求される。同法には刑事罰もあり、転職先の会社に最高1億5000万円の罰金刑が科されることもある(図参照)。

「守秘義務に関しては使用者側も強気で臨めます。退職時に各種書類やデータを保存したディスク類のほか、会社の名前で交換した相手の名刺まで返却を求める会社もあります」(石井弁護士)

不正競争防止法に定める「営業秘密」の漏洩に関しては、05年11月の改正法施行で罰則が強化されたばかり。同年には個人情報保護法が施行されたこともあり、情報漏洩には企業も社会もより厳しくなっているのが現状だ。

(ライヴ・アート=図版作成)