2000万台突破の中国自動車市場
実際に中国のEV事業はどうか。現地の事情に詳しい李澤建・東大大学院経済学研究科ものづくり経営研究センター特任助教はこう語る。
中国の自動車市場は2009年に1330万台を超え、世界一の自動車大国になった。これに農村などで運搬用に使われる農用車を入れると1600万台に上り、今年はこの合計数が2000万台を突破すると予想される。
中国では自動車としてカウントされない農用車について、日本の高度経済成長時代に一世を風靡したオート三輪車を想像してもらえればイメージしやすい。山東省だけで23社の農用車メーカーがあり、同省は中国最大の農用車生産と消費地でもある。
今、中国政府が推し進めるのが小型車の普及だ。都市部でのオートバイと農用車の乗り入れ禁止措置とも相俟って、低速度モビリティの石油燃料から電気への転換が急速に進んでいる。
中国では近年、「低速電気自動車(低速電動車)」という新しい分野が確立し始めている。その背後に農用車販売の不振から低速電動車製造へ転身する農用車メーカーが数多くみられる。加えて中国の電池メーカー、BYD(比亜迪・本社は広東省)の動向も見逃せない。リチウムイオン電池の中国最大手だが、携帯用の需要が頭打ちになるのに伴い、次の事業展開としてEVへの進出を視野に入れた。
09年1月に自社開発のEV「e6」の発表で世界を驚かせ、今年3月には100台のEVを深●のタクシー会社に納入して実力を示した。BYDは独ダイムラーとの間で、BYDが電池を含む動力ユニットと制御システム、ダイムラーが車体技術を提供して新たなEV開発を目指すパートナーシップも実現している。こうした一連の流れを総括して、李は次のように話す。
「00年頃に都市部で本格化したモータリゼーションの波が、10年遅れで農村部にも波及している。部品がモジュール化された低速EVは、モノづくりをしない企業でも組み立てることができ、政府の許可さえ下りれば、スモールハンドレッドは加速度的に増えていくでしょう」
※●は土の右に川