簡単そうで難しい質問「お父様のご趣味は」

幼児教室が増え、小学校受験のプロが面接指導を細やかに行うようになった昨今、面接でそつなく振る舞える親は増えた。だが、親の本音が見えにくくなったのも事実だ。そこで最近では予想外な質問をする学校も増えてきた。かつては「本校を志望された理由は」「ご家庭での教育方針を」といった素直な質問が多かったが、最近は「なぜ、キリスト教系の女子校を希望したのか」「(父親に向かい)奥様のどのような面を子どもに受け継いでほしいか」といった、瞬時には返せない質問が飛び出してくるようになったのだ。

あるいは一見、単純だが、字義通りの答えではNGな質問もある。

例えば、「お父様のご趣味は」と聞かれ、「ワインとゴルフです」と答える。

あるいは「最近どんなときにお子さんを褒めましたか」と聞かれ、「鉄棒ができたときです」と答えたり、反対に「どういうときにお子さんを叱りますか」と聞かれ、「命に関わるようなときには真剣に怒ります」と答えたりする。このような返答は、無意味だと大岡氏は言う。

「命に関わることで叱らない親はいません。鉄棒ができて褒めたという答えからは何もくみ取れません。趣味でワインを飲み歩き、週末はゴルフ三昧となれば、家庭で過ごす時間があるのか不安になります。面接官は親の趣味や過去の体験を知りたいわけではなく、その裏にある父子の関係を知りたいのです」

面接はいわば相手から与えられたプレゼン時間。問いはきっかけにすぎず、そこから相手に自分たちの熱意や学校への理解をどう示すかが勝敗を決する。そのために必要なのは、相手の意図を探る能力と、体験から将来までのストーリーを紡ぎだす作文的能力だ。

例えば、立教小学校などの私立一貫校は小学校入学後の受験がない分、豊富な体験を積めるカリキュラムが充実している。受験という荒波にもまれる体験は少なくなるが、その中で何を得てほしいのか、将来像まで繋がる話で面接官を納得させたい。

「仮にワインが趣味でも、『学生時代にブドウの品種を勉強し、ヨーロッパのワイナリーを巡りソムリエの資格も取った。息子にも生涯の趣味を見つけ、仕事にまで活かせる豊富な体験や知識の吸収に目覚めてもらいたい、だからこそ貴重な体験を積める場として一貫校である御校を希望した』という話ならば、面接でしっかりと伝えるべきです」(大岡氏)