コンビニの大きな利点は、すばやく買い物ができることだ。ちょっと買い物をしようと立ち寄ったコンビニで、レジに長蛇の列ができていて、「じゃあやめよう」と踵を返した経験のある人もいるだろう。小売業界は人手不足が続いている。コンビニ各社は2010年頃からセルフレジの導入を進め、客1人あたりの会計にかかる時間の短縮を進めてきた。

一方で、コンビニ各社は、2013年頃からイートインスペースの設置を拡大してきた。これには、10年前に比べて60%以上売り上げが落ちた雑誌売り場を縮小したことで、空いたスペースを活用したいという事情がある。また、財布のひもが堅くなっている消費者に対して、1人で簡単に済ませる食事や、ちょっとした打ち合わせ、休憩といったニーズに応えることで、客を取り込みたいという考えも当然あった。

レジでの判別は不明なため、イートインを設置したことによる直接的な売り上げ効果は計れない。また清掃の手間や、購入した酒類を飲んで長時間滞在する客への対応など、運用コストは大きい。だが、特にコンビニコーヒーの登場以降は女性やビジネスパーソンによる利用が増え、他業態からの売り上げの収奪に一定の効果があるとされている。

10兆円を突破した「中食」市場

惣菜=中食市場は今伸び盛りだ。日本惣菜協会の「惣菜白書」によれば、2017年の市場規模は前年比2.2%増の10兆555億円となり、初めて10兆円を突破した。なかでもコンビニは前年比3.7%増で、業態別では最も大きい伸びを見せている。ファミリーマートは2019年2月末までに「中食構造改革」を推進し、専用工場を新設する計画を発表している。

現在、大手コンビニの総店舗数は5万8435店舗(18年9月末時点)を超え、今年8月まで既存店客数は29カ月連続でマイナスとなっていた。全国的に、飽和状態に陥っているのだ。

そうした中で各社は、成長の期待できる中食に力を入れ、店舗レイアウトを変更し、よりスムーズな買い物のためにレジシステムの改善を重ねてきた。「持ち帰るか、この場で食べるか」という確認作業をレジ業務に加えることは、こうした企業努力に冷や水を浴びせかねない。