アレクサンドロス大王こそ世界史の出発点

それでは、どこが始まりか──私が考えているのは、古代ギリシアとアレクサンドロス大王です。大王の国としてはマケドニアですけども、古代ギリシア世界ですね。この有数の文明に育まれたアレクサンドロス大王といえば、大東征、世界征服の試みで知られています。

佐藤賢一『学校では教えてくれない世界史の授業』(PHP研究所)

アレクサンドロス大王は、前323年6月、ペルシアのバビロンで熱病にかかり、そのまま死んでしまいます。32歳と11カ月、もう少しで33歳、まだそんな歳にしかなっていませんでした。あまりに劇的な人生というか、太く短くの典型ですね。歴史の流れからすると、ほんの一瞬にしかすぎません。それでも、その一瞬に世界征服の意志、自分たちの勢力範囲を広げるんだという以上に、世界を征服してやる、世界をひとつにする、自分たちの歴史をこそ世界史にするのだという意志が、人類史上初めて明らかにされたわけです。

このアレクサンドロス大王こそ世界史、つまりユニヴァーサル・ヒストリーの出発点なのです。アレクサンドロス大王のあとにはきちんと歴史の流れができるからです。その覇権の歴史から、世界史の流れが見えてくるのです。

佐藤賢一(さとう・けんいち)
作家
1968年山形県生まれ。山形大学教育学部卒業後、東北大学大学院文学研究科で西洋史学を専攻。99年『王妃の離婚』で直木賞を、2014年に『小説フランス革命』で毎日出版文化賞特別賞を受賞。著書に、『ハンニバル戦争』『遺訓』『ラ・ミッション 軍事顧問ブリュネ』『テンプル騎士団』『ヴァロワ朝 フランス王朝史2』(以上、講談社現代新書)など多数。
(写真=iStock.com)
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