なお、プログラム取引が相場の不安定性を高めたことは過去にもみられた。1987年10月19日に発生した“ブラックマンデー(一日でNYダウ工業株30種平均株価が約23%急落)”の背景には、ポートフォリオインシュランスという投資プログラムの影響があった。これは、株価が下落すると先物を売り建て、さらに下落すると追加的に先物を売り建てるという取引プログラムだった。
また、2007年から2008年の米国株式市場では、統計学の手法を用いて株式投資を行うクオンツファンドからの住宅や金融関連銘柄への売り注文が増えた。各運用会社の用いる分析手法には共通点が多く、特定の銘柄・業種に売りが殺到して株式市場の不安定性が高まったと指摘する専門家は多い。
株価が急速に下落トレンド入りする展開は考えづらい
足元、米国経済は好調だ。今すぐに、GDP成長率がマイナスに陥ること(景気の失速)は想定しづらい。成長率が幾分下ぶれる可能性はあるが、全体的には緩やかな景気回復が続くだろう。今年の年末商戦に関しても、小売企業経営者やエコノミストは強気な見方を示している。
しばらくの間、米国の株式市場は高値圏を維持する可能性がある。少なくとも、短期のうちに米国経済のファンダメンタルズ=経済の基礎的な条件が大きく悪化し、株価が急速に下落トレンド入りする展開は考えづらい。中間選挙が終われば、イベント消化から投資家のリスク許容度も回復するだろう。
ただ、株価の上値は抑えられ気味になるとみる。今回の株価下落を見ていると、市場参加者の経済に対する見方は徐々に変化している。最も重要なことは、米国の経済成長を支えてきたIT先端企業の成長期待が低下しつつあることだ。
「GAFA」など米IT先端企業に対し、慎重な見方が増加
3月に発覚したフェイスブックのデータ不正流出問題はその一つだ。グーグルに関してもデータセキュリティ面への不安が高まっている。ユーザーの個人情報をどう管理・保護していくかは、多くのIT企業に共通する課題だ。アマゾンに関しても、データ管理・保護に関する規制強化の影響は免れないだろう。
また、世界的にスマートフォンの販売台数は頭打ちだ。新興国では低価格モデルが需要を集めている。価格帯の高いアップルの新型iPhoneが人気を獲得するのは容易ではない。GAFAを中心に米IT先端企業の経営に関する慎重な見方は増えるだろう。このように考えると、当面の米国株式市場は高値圏でもみ合いつつ上値は重くなる可能性がある。