外国人労働者の在留期間が最長5年というのも根拠のないバカげた線引きだ。日本で5年うまくやれた人材なら30年でも50年でも長くいてもらえばいいのだ。
日本では移民に対するアレルギーが強く、「移民を受け入れたら日本らしさが失われる」とか「国の統一性がなくなる」「社会が不安定になる」「治安が悪くなる」といった反対論が根強い。日本らしさや統一性を守りたい気持ちは理解できなくもない。しかし、主義主張を貫いて“純血”を守っても、国家が年老いて滅んでしまっては元も子もない。日本はもはや移民というオプションしか残されていないところまで追い込まれているのだ。
ドイツは1950年以降、人手不足を解消するために、トルコ、ギリシャ、イタリア、ポーランドなどから積極的に移民を受け入れてきた。当初はドイツ人と移民の間で葛藤や確執があったが、今では国民の5人に1人が「移民の背景」を持つようになり、社会はそれなりに安定している。私が提案しているような形で教育課程を経て日本に定住する外国人が増えれば、治安上の不安は低減するだろうし、親日的な人が増えて国同士の関係も深まるはずだ。
長い目で見れば、それが日本の安全保障にもつながる。日本で働く外国人労働者の数は約128万人(17年10月末時点)まで増加して、日本で就業する人の約2%が外国人という時代になった。今後、移民政策に本腰を入れるなら、人口の10%程度を受け入れターゲットに制度を確立するべきだろう。
少子化対策に本気度が足りない
人口減少社会における日本の最優先課題は移民と、もう1つはやはり少子化対策である。少子化を克服した先進国として名前がよく挙げられるのがフランスとスウェーデンだ。
フランスは94年に1.66まで下がった出生率(合計特殊出生率=1人の女性が15歳から49歳までに生む子供の平均数)が、10年には2.01に上昇した(ただし、ここ数年出生率を下げている)。スウェーデンは99年に出生率が最低の1.5を記録したが、10年に1.98まで回復させている。
フランスもスウェーデンも政府が積極的な出産・育児支援を行い、子供を安心して産める環境を整えている。フランスの場合、第2子以降は所得制限なしで家族手当がもらえるなど各種手当や充実した保育サービスが受けられる。「N分のN乗方式」という子持ちに有利な所得税制を採っていて、子供が多いほど税金が下がる。3人産んだら税金はほとんどかからない。
スウェーデンの特徴は育児と仕事の両立を支える福祉政策。出産後も仕事を辞めずに育児休暇を利用しながら働き続ける女性が多く、男性も8割近くが育児休暇を取って子育てに協力する。児童手当や育児給付金も充実していて、3人目の子供が生まれると大きな家に引っ越すための住宅補助金まで出る。