私は現在、年間250回のペースで講演をしています。それぞれ講演時間も違えばテーマも違う。何度も足を運んでくださる方がいらっしゃるので、まったく同じテーマではできないのです。結果的に講演で使う資料も毎回違います。しかし、このようにAIを活用すれば毎回ゼロから資料を作成する必要がありません。場合によっては、9割方できあがったところから作業を開始することも珍しくないのです。
“高評価”資料を、AIが機械学習
ただ、AIのもう1つの機能――より芸術的・効果的なビジュアルの資料を作るという部分では、まだAIに頼り切ることができないというのが実情で、私もその点については、専門のデザインチームに依頼しています。
もっとも、将来的には評価の高かった資料を集めて、なぜ高い評価が下されたのかをAIに機械学習させて、そこから「こういう構図にしたほうがいい」と提案してくれたり、目的に応じて「こういう作り方をしたほうがいい」と示唆してくれたり、さらにこちらが作成した資料に修正を入れてくれるようなシステムができる可能性は十分あります。そこまでいかなくても、「どの資料が顧客受けがよかったか」「どの資料がよく流用・転用されているか」がランキングで表示できるようになるだけでも、営業マンなどの資料作成時間は短縮するでしょう。そのような情報をAIがメタデータとして自動的に付与するなどといった形であれば、すぐにも実用化できそうです。
一方、プレゼンソフトによる書類の作成においては、当然ながら「文字情報」も重要な役割を果たします。ここでAIの力が発揮されるのが「要約」機能です。たとえば、当社のジンライは、AIの中でも日本語の扱いが飛び抜けて秀でていると自負しています。長い文章を要約する能力は、新聞記者とほぼ変わらないところまできていると評価されているほどです。実際、信濃毎日新聞で活用されているくらいですから。
この要約機能を使えば、社内外にある膨大な情報を効率よくキャッチできるだけでなく、書類を作成する際にも有効です。たとえば、最近のプレゼン資料や説明資料は、「1ページ1メッセージ」というコンセプトで作られることが多くなっています。1ページの中でくどくどと長い文章で説明したり、いくつもの情報を盛り込んだりするのは嫌われます。そうしたとき、AIがコンパクトな文字数で的確に要約してくれれば、書類作成の効率が飛躍的に向上するというわけです。
書類作成業務におけるAI活用はまだ緒についたばかりといえるかもしれません。それだけに今後、オフィスの現場に大きな変革をもたらす可能性も秘めているといえるでしょう。(談)