在庫には当然のようにお金がかかっています。在庫だから平然と積み上げ、埃をかぶったままにしておけますが、決して好ましいことではありません。
徹底的に「Why?」を集める
そこで、「なぜ使わない在庫がこんなにたまるのか?」「なぜ好ましくない状態が放置されているのか?」を、パートを含む全従業員に問いかけました。徹底的に「Why?」を集めたのです。すると、次のような答えが返ってきました。
「自分たちの売り場は1階なのに、バックヤードは4階にある。重い荷物を持って4階まで上がったり、降りたりするのは大変だ」
「在庫の置き方が決まっていないから、ものを探すために時間もかかる」
「何がどこにあるかが一目でわかるようにしてほしい」
「新しく入った在庫を手前に積む人がいて、奥のものを出すためにいったん手前のものを動かして、ものを出した後、また積み直すという余計な手間がかかる。だからつい、奥の古い在庫は置きっぱなしになってしまう」
どれも現場で働く身としては、「それはそうだよな……」と思えるものです。
年中行事化させない仕組み作り
A社はこれまでも在庫の削減を実現するために、整理と整頓を心がけてきました。年に2回程度は整理と整頓を行っていましたが、A社とトヨタ式の間には大きな違いがありました。
A社は整理と整頓は行うものの、「整頓された状態を維持するための仕組み」が欠けていたのです。そのため、いったんはきれいになるものの、新しく入った在庫については決まりごとがなく、つい置きやすい場所に置き、古い在庫が奥へ奥へと押しやられていたのです。
さらに次なる「Why?」として「なぜ整頓された状態を維持できないのか?」を調べたところ、理由は「忙しさ」にあることがわかりました。
担当者も、新しい在庫より古い在庫が手前に来るほうがいいことは当然わかっていましたが、忙しいとつい「取りあえずここに置いておいて、あとで直すことにしよう」と手前に置いてしまうのです。
しかし、現実には「あとで直そう」が実行に移されることはほとんどありません。
こうしたことを繰り返すうちに、せっかくの整理と整頓はぐちゃぐちゃになり、半年、1年とたった時に「さて、そろそろ整理と整頓をやるか」となってしまうのです。