3.勉強の楽しさを活用する

インセンティブは重要なものですが、それだけでは勉強は苦しいものになってしまいます。人々が「お手軽勉強法」を求めるのは、「苦しい勉強をできるだけ早く済ませて、結果だけ欲しい」と考えるからでしょう。

実は、勉強の最も強いインセンティブは、好奇心です。面白いから、楽しいから勉強するのです。研究者は、社会に貢献しようとして研究しているのではなく、面白いからやっています。

人間はもともと好奇心が強く、これは人間としての本能です。自然界で人間だけが勉強によって進歩します。そして、知識が増えれば、好奇心はさらに増します。知りたいことは、加速度的に広がるはずです。そして、さらに勉強したくなります。

問題意識を持っていれば、情報が捉えられます。問題意識を持って情報をプルする人と、プッシュされる情報をただ受ける人の差は大きいのです。好奇心を持たない人がいることが、私にはとても不思議です。

私は、国内線の飛行機に乗るときは、窓際に座り、天気がよければ、ずっと地上を見ています。首が痛くなってしまうほどです。自分がよく知っている場所を上空から見られるのは、本当に楽しいことです。ところが、ほとんどの乗客は、窓際席にいても地上を見ていません。地上の風景に興味を持たないというのは、私には信じられないことです。たぶん、地理が分からないために、興味がわかないのでしょう。

私が非常に驚いたのは、1997年にヘール=ポップ彗星が地球に近づいたときのことです。たまたまシアトルに行く用事があり、成層圏を飛ぶ飛行機の中から、この世のものならぬ彗星の姿を見ました。一方の窓に乗客が偏ってしまって飛行機が傾いてしまうのではないかと心配したのですが、驚いたことに、窓の外を見ているのは私だけでした。後ろの席の乗客は、読書灯をつけて新聞を読んでいました。1000年に1度あるかどうかのチャンスなのに、どうして平然としていられるのでしょうか?