「東京が全国のけん引役に」と毎日

今回の東京都の受動喫煙防止条例を、各紙の社説はどう捉えているだろうか。

まず毎日新聞の社説(6月28日付)。冒頭で「人口でも飲食店の集積でも突出している東京が踏み出した意味は大きい」と書き、後半で「飲食店が最多の東京で、厳しい条例が施行されれば影響は大きい。都がけん引役となり、この条例が全国標準となることを期待したい」と都条例を評価する。見出しも「東京が全国のけん引役に」である。

厚生労働省の推計だと、受動喫煙で年間に1万5000人もの人が死亡している。受動喫煙の被害は甚大だ。たばこはかなり以前から「百害あって一利なし」と非難されてきた。そこを考えれば、都条例でも防止策は完璧とはいえない。

毎日社説は「喫煙専用室を設けても煙は漏れることがある。『完全禁煙』でなく不十分との指摘はあるが、受動喫煙を防ぐ対応としては現実的だろう」とも書く。

だが、沙鴎一歩は反対だ。「完全禁煙」にすべきだ。従業員の有無にもかかわらず、飲食店はすべて禁煙にするのが正しい。喫煙専用室を設けたからといってそこを出入りする客がいる限り、煙は必ず漏れる。煙の大半は目には見えない。煙を知らないうちに吸い込むことでたばこを吸わない人の体がむしばまれていくのは、避けなければならない。

かつて沙鴎一歩もたばこを吸っていた。20年以上ほど前、ニコチンガムを使ってなんとか禁煙に成功した。実際、たばこはうまい。お酒を飲んだときや食事後は格別だ。しかし非喫煙者が他人のたばこの煙で発がんの危険性にさらされる理不尽さは納得し難い。

「規制対象が45%」の国の改正案は甘い

毎日社説はこうも指摘していく。

「世界保健機関(WHO)などが進める『たばこのない五輪』の実現を迫られての条例だ」

「もっとも、五輪は都内だけで開かれるわけではない。条例の趣旨を広げるためにも、会場となる他県も同様の対応を考えるべきだ」

「政府も受動喫煙を防ぐ健康増進法改正案を策定し、国会で審議中だ。しかし、政府案は自民党が中小規模の店舗に配慮するなど抵抗した結果、都条例に比べて規制がゆるい。客席面積100平方メートル以下で個人などが営む既存の店は喫煙が可能で、規制対象も45%ほどだ」

毎日が指摘するように、「規制対象が45%」という国の改正案は緩すぎる。

6月27日付のプレジデントオンラインでは、「がん患者へのヤジを許す安倍総裁のおごり」という見出しを付け、国会の参考人に「いいかげんにしろ」とやじを飛ばした自民党の国会議員を厳しく批判した。審議は受動喫煙対策を強化する健康増進法改正案をめぐるもので、呼ばれていた参考人は肺がん患者だった。受動喫煙に対する与党、特に自民党の考えの甘さが、そうした非常識な国会議員を生むのだ。