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うちの子にパワハラした上司を辞めさせろ!

若手社員がパワハラを訴えるケースでは、本人ではなく親が前面に出てくることが多い。本人とは連絡がとれず、両親が代理人と称して、声を荒げてくるのだ。

かつて、小売業の会社から相談を受けた。入社して3カ月の社員から、「パワハラを受けたので上司を辞めさせてほしい」という訴えがあったというのだ。この上司は指導もしっかりしていて、会社としても手放すわけにいかない。さりとて、新人は出社もせずに両親がまくしたてるように電話をしてくる。社長としてはどうしたらいいものかわからず、人づてに事務所にいらっしゃった。

事実関係としては、上司の指導は決してパワハラと言われるようなものではなかった。不適切な行動をきちんと指摘したにすぎない。それでも上司の方は、パワハラと指摘されたことに本当に疲弊していた。「これもパワハラになるのでは」という不安は、中間管理職に蔓延し、萎縮効果を引き起こす。本来あるべき指導がなされず、かえって社員の成長を阻害してしまう恐れもある。あるべき指導がなされなければ、企業の発展など期待できない。

新人社員の両親は、わが子から聞いた話を鵜呑みにして、事実無根の話を執拗に繰り返してきた。愛情は、ときに人の判断を誤らせるのだ。そこで本件では、3カ月分の賃金相当額を支払って、退職してもらった。この事案では、経済的な補償をして退職してもらうことがベストな解決だったと考えている。

では、このようなトラブルにならないためには、どんなところに注意するべきか。3つのポイントを押さえておくことが、トラブル回避や若手社員の定着に効果的だ。