公開されたイラク派遣の日報について、いくつかのメディアは早速、「戦闘」の文字を見つけて盛り上がっているようだ。しかし、そうした記述は「派遣地域が緊迫した情勢にある」という意味でしかない。緊張が高い地域だからこそ、武装を持ち、自己完結性が高く(編集部注:食料・電気・通信・移動手段などを自力で確保できること)、規律と安全を重んじ、復興支援任務に適した技術を有する自衛隊が派遣されたのだ。その根本的な前提を無視し、散発的なテロ行為の記録をあげつらうのは、「為(ため)にする議論」と言わざるをえない。彼ら派遣される自衛官の手足を縛ったのは、他でもない、左派勢力の終わりなき反発と、彼らの非合理的な主張を斥(しりぞ)けきれないまま、強引に派遣を決定した政府であったことを忘れてはならない。
「読み物として面白い」とネットでは高評価
一方で会員制交流サイト(SNS)をはじめとするネット上では、公開された日報データが「読み物として面白い」という声が相次いでいる。公開されたPDFファイルをグーグルの文字認識サービスで処理し、内容の検索ができるようにした「日報村」なるサイトも登場。日報を読み込むネットユーザーが増えているようだ。
特に面白いと感じるのは、サマーワに派遣された陸上自衛隊本隊から遠く離れ、バグダッドやバスラの多国籍軍司令部に派遣されたLO(連絡将校)たちの日誌風コラムだ。少数精鋭が孤軍奮闘するなかでの出来事を、自然な筆致でつづっている。日報が防衛省内で広く閲覧されることを考えると、これは身内に読ませるだけの内容ではなく、むしろ現地の生の情報を広く伝えんとしたものだろう。
中でも筆者が珠玉だと感じたのは、バグダッドの有志連合司令部裏にある池を巡り、そこに住むカエルに心を寄せる「カエル砲撃事案」(2006年6月25日)だ。同司令部をめがけて時折テロリストが迫撃砲弾を撃ち込んでくるのだが、それが池にも着弾し、バグダッド連絡班の隊員が「カエルは無事だろうか」と心配する話である。