「政争」年のはずなのに
今年は3年に1度の自民党総裁選の年。自民党にとっては政争の年だ。総裁の座を目指す議員にとって「安倍1強」が崩れるのは千載一遇のチャンスのはずだ。
総裁選には石破茂元幹事長、岸田文雄政調会長、野田聖子総務相が出馬をうかがい、河野太郎外相の名も取り沙汰される。彼らの言動はどうだろうか。
「事実を明らかにすることが第一だ。(麻生氏は)自身のあり方は自身で判断するべきだ」(石破氏)
「財務省で調査をするということだが、まずは真実をしっかり明らかにしてもらわなければならない。その上で政治の立場から日本の信頼回復のためにしっかり努力をしていかなければならないと思う」(岸田氏)
「非常に残念。麻生氏は究明する責任があり、その後のことは本人の判断」(野田氏)
「麻生氏のもと調査をしっかりとして、信頼される政府にしなければ」(河野氏)
いずれも真相を究明する必要性は強調し、麻生氏主導で真相を究明する必要性は訴えているが、政府全体を批判する声は聞こえてこない。ましてや安倍氏への批判は皆無といっていい。
「安倍1強」の中、自浄作用を失っている証拠
石破氏に近い議員からは、今回の森友文書改ざん問題を「願ってもない展開。森友学園の籠池泰典元理事長ではないが『神風だ』」という声も漏れてくる。しかし、安倍首相が倒れれば勇んで政権を取りに行く意欲は感じられるが、自ら倒閣しようという決意は感じ取れない。安倍氏と最も敵対する石破氏側がその程度なのだから、岸田、野田、河野氏らは推して知るべし。官邸批判は聞こえてこず、逆に「こういう時に党内の不協和音を出さないように」という通達を出すベテラン議員もいる。
苦しい時に結束するのは、長い間政権を維持し続けてきた自民党の「秘伝のタレ」であることは否定しない。しかし行政文書の大規模改ざんという前代未聞の事態となっている今なお、沈黙が続いているというのは、「安倍1強」の中、自浄作用を失っている証拠でもある。
内閣支持率は暴落中。時事通信が3月16日に公表した世論調査では、内閣支持率は9.4ポイント低下して39%台に低下。5カ月ぶりに不支持が指示を上回った。国民の不信に応えず、だんまりを決め込んでいるようなことがあれば、麻生氏、安倍氏にとどまらず自民党全体が見放されることになりかねない。