タカラトミーの営業、佐野中哉氏(左)と荻窪「喜屋」の関口佳三氏(右)。

「営業、開発、マーケティング。タカラトミーさんからは、とりあえず誰かが毎週来ている」というのは、荻窪で創業26年の街のオモチャ屋さん「喜屋」の取締役、関口佳三氏だ。

「街のオモチャ屋にとっての最大のライバルは、ネット販売と大型家電量販店です。正規の価格より大幅に安く販売している彼らと、価格帯では勝負できない以上、我々にとって工夫できるのは売り場のレイアウトとイベントのみ。実際に子どもたちが店頭に遊びに来てくれてこそ、街のオモチャ屋の存在意義はある。そこをきっちりとサポートしてくれるおかげで、子どもたちの集客率はものすごいです。学校が終わればうちの店に集合し、店頭の『ベイ太』で遊んで帰っていく。新製品が出たときなどは、1日に400個以上売れることもあるし、土日の賑わいも素晴らしい」リーマン・ショック以降、確かに客単価は下がった。しかし、それでも高価な商品が売れなくなったというだけで、意外と低価格商品の売り上げには影響していない。

「ベイブレード」が不況下で売れているというのも、1000円前後で買えるその価格帯に理由がある。クリスマスや誕生日など、いわゆる物日には両親も財布のひもを際限なく緩めるわけにはいかないが、子どもたちが小遣いで買える程度の低価格帯のものなら、むしろ買ってやりたいと思うものだ。

「流行は繰り返します。アナログ玩具のいいところは、世代を超えて共通の遊びを追求できるところです。テレビゲームでは世代の隔たりがあるところも、『ベイブレード』ならば、親子二世代、三世代で楽しむことができる。タカラトミーの強みは、タカラとトミーが何十年と培ってきた定番商品にこそあります。玩具とは、触って使ってみて初めてわかるもの。我々の意識としては、モノを売っているというよりは、タカラトミーの世界観を売っているんです」営業として日々街のおもちゃ屋を巡る佐野中哉氏はこのように言う。街のオモチャ屋さんと玩具メーカーが、手を携えて再び三次元の玩具へと子どもたちを引き戻してきた。

「店頭に子どもたちが帰ってきてくれた今年の冬の商戦が楽しみですね」(佐野氏)ズラリと並んだオモチャの前で、2人の笑顔がはじけた。。

(小原孝博、室川イサオ、岡本 凛=撮影)