このような法律を知らずに個人事業主と仕事をして、トラブルに発展するのはリスクが大きい。中小企業庁は無料相談窓口として「下請かけこみ寺」を設けており、場合によっては調停や裁判に持ち込まれる可能性もある。

「労働者」と判断される要素とは

よくあるのが、依頼主は相手を個人事業主として業務委託をしていたつもりが、実質的には「労働者として働かされた」と訴えられ、残業代を請求される事例。ここで主に問題になるのが、相手を時間で縛っていたかどうかだ。

そもそも個人事業主は、働いた時間に関係なく、成果物によって報酬が支払われる。一定時間会社にいるように命じたり、タイムカードを押させるなど時間で拘束した場合は、労働者として「時間の対価」の給与を要求されかねない。1カ月の報酬を15万円に設定していたのに対し、「残業代を含めると25万円程度もらう権利がある」との相手側の主張で、未払いの残業代合計約200万円を請求されたケースもある。

「個人事業主には労働組合もない」「関係性が悪化するのを嫌って強気には出てこない」など、高を括るのは危険である。窮鼠猫を噛む、という言葉もあるように、時に権利を主張される可能性があることを肝に銘じたい。

▼「労働者」と判断される要素
・仕事を頼まれたときに断れない。
・雇用主(または上司)から仕事のやり方を指示される。
・給与は勤務時間によって計算され、支払われる。
・ほかの人に仕事を変わることができない。
・勤務場所と勤務時間が決まっている。
※佐藤弁護士の話をもとに作成

佐藤大和
弁護士
1983年生まれ。大手法律事務所を経て、2014年レイ法律事務所を設立。テレビドラマの監修や、ワイドショーにレギュラー出演も。日本エンターテイナーライツ協会共同代表理事。著書に『ずるい暗記術』(ダイヤモンド社)など。

 
(構成=高橋晴美 写真=iStock.com)
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