時に厳しさは矢部さんにも向かう。庭の雑草取りの手伝いで連れてきたチャラい後輩芸人のチャラい発言に、矢部さんはちょっと頭をたたく。芸人さんの世界の「ツッコミ」。だが大家さんは、「今日の矢部さんは、なんだか暴力的ね」とたしなめる。優しさ+強さがあっての長寿と思う。
好奇心は健康長寿への道としては、わかりやすいと思う。外へのアンテナを持つこと。閉じこもらないこと。とても大切だ。
大家さんは「恋ばな」が大好き
大家さんの好奇心たるや、すごい。夢がバンジージャンプなのだ。「外国の橋の上から 飛び降りるの ビヨーンて」と表現するのだが。トーク番組への出演依頼も、「矢部さんとなら楽しそう 出てみたいわ」と引き受けてくれる。しかもそこで、矢部さんよりも笑いをとってしまう。とても難しい気象予報士の資格を持っていると矢部さんを褒め、自分で天気を予想して洗濯物を干すから参考にしていると言う。「でも矢部さんが干すといつも夕立で 私は干すのをやめるの」と。
自分のこと、日々の出来事を、面白く話せる人。これも私の発見していた健康長寿ポイントの一つだ。
さて最後に、矢部さんのトークイベントで聞いた、とっておきのお話。
「大家さんは恋ばなが大好き」なのだそうだ。
本の中にも、「男子のタイプ」についてのエピソードはたくさん出てくる。「テレビで民放を見るのは、羽生結弦くんの時だけ」というキュートな話、「マッカーサーは哀愁があり、どこかに連れてってくれそうで好きだった」という意表を突く発言、「芥川と太宰は、顔がタイプ」という語録……。
優しくて、好奇心が強くて、イケメンが好き。この三拍子がそろうこと。これが、最強の健康長寿への道かもしれない。
コラムニスト
1961年生まれ。83年、朝日新聞社に入社。宇都宮支局、学芸部を経て、週刊誌「アエラ」の創刊メンバーに。その後、経済部、「週刊朝日」などで記者をし、「週刊朝日」副編集長、「アエラ」編集長代理、書籍編集部長などをつとめる。「週刊朝日」時代に担当したコラムが松本人志著『遺書』『松本』となり、ミリオンセラーになる。2011年4月、いきいき株式会社(現「株式会社ハルメク」)に入社、同年6月から2017年7月まで、50代からの女性のための月刊生活情報誌「いきいき」(現「ハルメク」)編集長。