しぐさを観察して確率を高める
「誠実な人は単純に事実を伝えますが、嘘つきはその餌食となる人に対して、自分の話を信じ込ませようとします。そこで、あなたはこうした人間の性質を利用するわけです。それには疑問を投げかければいい」
部下が「万事順調です」と言ってきたら、少し眉をひそめて「ほう」「ふーん」「へぇ」とだけ言ってみよう。そうすることで、さりげなく猜疑心を提示することになる。
これに対して部下があれこれと新たな情報を追加したり、ありとあらゆる言い訳を口にしたりしたら、その部下は自分の報告内容を信じるようにあなたを説得しようとしているのだ。真実をありのままに伝える部下であれば、そもそもあなたが「プロジェクトは予定どおりに進んでいるか?」と聞いたとき、万が一うまくいっていないとしても即座に真実を答えるだろう。
「こうしたシグナルは、相手が確実に嘘をついていることを示す証拠ではありません。あくまでも、これらが見られれば嘘をついている確率が上がる、ということです」とシェーファー博士は強調する。「人の心を完璧に読み取ることなど誰にもできません。ただし、しぐさという言葉を伴わないシグナルを観察することによって、限りなくそれに近いことができるようになる。たとえば、14~16を見てもわかるように唇の動きは言葉以上に多くを語るんです」。
【取引先編】あなたの提案に乗る気はあるか?
▼OK!
12. オープンな姿勢
取引先が【上司・部下編(1)】で紹介した(1)(2)(3)(4)のしぐさに加えて、オープンな姿勢(腕も足も組んでいない、身振り手振りを多用して話す、手のひらが上向き、「なるほど」「続けてください」「ふむふむ」などあなたを促したり勇気づけたりする言葉を使う)になっていれば、あなたの提案についてかなり興味を持っている証拠だ。
13. 前のめりに頷く
前のめりになって頷くことも、あなたの提案に乗り気であることを示すシグナルだ。人は好感を持ったものに対しては前のめりになり、苦手なものからは遠ざかる。理解力の高い人や物事を受容する能力が高い人も、前のめりになる。契約などが合意に至る場合、大抵は「私たち」のように相手を含む包括的な人称が使われる。
▼NG!
14. 唇をすぼめている
唇にしわが寄ったり唇がすぼんだりしたら、その取引先は難色を示している。これらのシグナルがよりはっきりと出ていれば、その人の「不賛成」の度合いはより高い。セールストーク中は相手の唇を見るように心がけよう。これらのシグナルが表れたら、その直前にあなたが話していた内容について、相手は不満を抱いているのだ。
15. 唇を噛む
上唇か下唇を軽く噛んでいる、または歯で引っ張るようにしているときは、言いたいことがあるのに躊躇している心理を表しているので、取引先の唇を見るときはこのシグナルも見逃さないようにしたい。相手の気分を害したくない、自分が悪者になりたくないという気持ちが働いて、人はとかく言葉をのみ込んでしまいがちだ。
16. 唇をきゅっと結んでいる
上下の唇が固く閉じられ、場合によっては唇が隠れるほどきつく結ばれているときも、言いたいことを我慢している。しかも、唇を噛むときよりもさらに否定的な言葉を抑え込んでいる。このサインを見つけたら、「お考えがあるようですが、今日は話していただけないのでしょうか」と語りかけると、相手から本音を引き出せる。
17. 否定を暗示する頭の動き
人は話を聞きながら無意識のうちに、自分の思考に合わせて首を横に振ることが多い。「それには同意できない」というシグナルだ。セールストークのあいだ、あなたは努めて頭を縦に振るようにするといい。相手がこの影響を受けやすい状況をつくるのだ。そうすれば、あなたの提案に好意的な反応を示すように、相手を誘導できる。