日本におけるコンビナート高度統合の成果


表2:「コンビナート連携石油安定供給対策事業」と対象事務所の従業員

日本においてコンビナート・ルネサンスが進展する契機となったのは、00年に石油コンビナート高度統合運営技術研究組合(Research Association of Refinery Integration for Group-Operation、 略称RING)が設立されたことである。RINGによって推進されてきたコンビナートの高度統合の成果を発展的に継承するため、09年度には、(1)資源の有効活用、(2)国際競争力の強化、(3)環境負荷の低減、の3つの目的をもつ「コンビナート連携石油安定供給対策事業」が、新たに始まった。表2は、同事業に選定されたプロジェクトを一覧したものである。

09年度に選定された知多地区の「コンビナート水素回収・燃料連携事業」は、2つの製油所の連携により、余剰水素の回収と分解重油の有効活用を行うものである。千葉地区の「コンビナートC4活用連携事業」は、副生余剰留分(C4留分)を隣接工場の装置原料として利用するものである。同じく千葉地区の「コンビナートナフサ供給連携事業」は、原料ナフサの共同揚荷・使用により、製油所での白油増産と石化工場でのオレフィン収率向上を図るものである。また、10年度に選定された知多地区の「コンビナートLNG冷水活用連携事業」は、LNG気化時に発生する冷水を石油精製プロセスで活用することにより、製油所の生産効率を向上させるものである。水島地区の「コンビナート高度統合生産連携事業」は、複数の石油・石化事業所の連携設備有効活用や原料・燃料の多様化による統合一体運営により、コンビナート全体の競争力を強化するものである。

コンビナートの高度統合は、地域経済の活性化や雇用の確保にも大きく貢献する。千葉・水島(岡山県)・大分コンビナートの製造品出荷額は、地元県の製造品出荷額全体の過半に達する。表2からわかるように、「コンビナート連携石油安定供給対策事業」に参加する事業所では、多くの従業員が働いている(とくに石油化学企業の事業所の従業員数が多い)。国際競争力の強化を通じてエネルギー・セキュリティの確保に寄与し、あわせて地域経済活性化や雇用確保にも資するコンビナート連携事業に対する社会的期待は大きい。

(平良 徹=図版作成)