それにしても「この、ハゲーーーーーッ!!」には参った。30歳ごろから前頭部の生え際が後退し始め、後頭部が薄くなり、その後、短期間で毛がない部分がつながったから、「ハゲ」とは30年におよぶ長い付き合いだ。自分にとっては、髪がないのが自然な状態だから、日ごろは意識していなかったのだが、連日「このハゲーッ!」「このハゲーッ!」と怒鳴られ続けると、自分が叱責されているような気分になる。NHKだけは「この、ハゲーーーーーッ!!」ではなく「ちーがーうーだーろー」のところが使われるので、つい、安心してチャンネルを合わせてしまうのも微妙だ。とはいえ、NHKにとって「ハゲ」という言葉が差別語だという認識だから流さないのだろうか。それはそれで複雑な気持ちになる。
ハゲに対してポジティブな私でさえ、これだけ嫌な感じなのである。もともと薄毛を悩んでいた人はどれほどつらいだろうと心配になった。飲み屋に行けば、仲間同士の余興で豊田氏のモノマネで「この、ハゲーーーーーッ!!」とやる人たちも絶対にいるだろう。そして、それはとても盛り上がっているに違いない。全国の薄毛、ハゲはどんな気持ちでいるのだろう。本当に私は悲しい。
今回、そんな皆様に少しでも元気を出してもらえたらと考え、私自身のハゲとの付き合い方をご紹介することにした。
しつこいようだが、私はハゲていることを気にしていないのだが、周囲は心配なのか、やたらと怪しげな育毛剤を持ち込んでくれる。
「中国の有名な毛生え薬が大阪にドラム缶で何本入りました」
「サウジアラビアですごい発毛剤が発明されました」などなど。
確かに、私の頭から黒い髪がふさふさ生えてくるような発明なら、億万長者になれるだろうが、大した効果はないのだろうと思い無料の試供品にも手を出したことはない。そんな私の態度に、持ち込んだ相手は必ず驚くので、世間のハゲたちがどれほど育毛剤を欲しているのかを思い知らされる。
私が髪形をスキンヘッドに変えてからもう10年以上になる。それ以前は側頭部と後頭部を多少伸ばしていたのだが、面倒なので全部剃るようにした。今では5分もあれば剃り終わる。最近は一般企業でもスキンヘッドの社員を見かけるようになったが、私が剃り始めたころは非常に珍しかった。かつては「任侠の世界」の人などが、威圧感を出すために髪を剃るような場合が多かったから、私もそういうコワモテだと思われているようだ。