組み合わせで怒りの発現の仕方も大きく変わる

ちなみに、不安遺伝子の3タイプの割合は国や人種によって差がある。ある調査では、日本人はSS型が64%で、米国人は17%しかいない。一方でLL型は日本人4%なのに対し、米国人は31%。やはり、日本人はキレやすい民族なのかもしれない。

そして「怒りの大本には自分がマネジメントできないジレンマがあります。そして、エネルギーを爆発させることで、その場をコントロールしようとするのです。実際に上手くいっているときに怒る人は少ないはずです」と説明するのは、早稲田大学研究戦略センター教授で、マネジメントを脳科学の立場から研究する枝川義邦氏だ。

経済学の分野に「最後通牒ゲーム」というゲームがある。2人の前に10ドルを置き、「好きに分けてよい」という。ただし、1人に分配率を決める裁量権を与え、もう1人は提案を受け入れるか否かを決める。受け入れ拒否なら2人ともゼロになる。

ある研究結果によると、相手と自分の割合が「5:5」のときは100%が受け入れ、「7:3」だと90%、「8:2」だと50%未満に下がる。2ドルでもゼロよりは得するのに、不合理な行動をとる背景には、分配率を決められないジレンマや、裁量権を持つ相手への嫉妬心があるようだ。

興味深いのが脳の中での理性と感情のバランス。実はこのときの脳の動きを調べると、島皮質と背外側前頭前野が面白い動きを示していた。島皮質は怒りなど激しい負の感情のときに活動性が高まる。そして、状況判断など理性的なコントロールにかかわるのが背外側前頭前野だ。

「提案を受け入れた人と拒否した人の背外側前頭前野の活動性はほぼ変わらず、合理的な判断が同じように働いています。一方、拒否した人は島皮質の活動性が高く、受け入れた人は低い。天秤に『感情』と『計算』があって、計算が勝ると合理的判断を下し、感情が勝つと拒否して『ちゃぶ台返し』をすると考えられます」(枝川氏)