近年の上野動物園の来園者数は369万3757人(2014年度)→396万9536人(2015年度)で、今年は赤ちゃんパンダの誕生で来園者数の大幅増も期待できる。動物園の役割は「野生動物保全」や「種の保存」だが、やはり地元として期待するのは来園者数の増加だ。

「レジャーが多様化した現代でも、動物園は、お子さんからお年寄りまで、家族連れでもカップルでも楽しめる“全方位型“の施設です。だからこそ、来園者数の増加は、地元の期待が大きいのです」(二木氏)

世界遺産、朝ドラより「パンダ」

上野はパンダ以外にも「コンテンツ」が豊富にある。テレビ番組の「街歩き」では定番スポットとして度々取り上げられる。特に年の瀬のアメ横商店街の混雑は「歳末の風物詩」だ。ニュースになるような連携や仕掛けづくりも上手い。

約430の店が立ち並ぶ「上野アメ横商店街」(筆者撮影)

たとえば2013年にはNHKの連続テレビ小説「あまちゃん」で、主人公・天野アキ(演じたのは、のん)が上京して芸能活動を始める舞台となり、多くの観光客が訪れた。さらに2016年には上野公園の「国立西洋美術館」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界遺産」に登録された。同館は、フランスの建築家であるル・コルビュジエの建築作品で、フランスなどとの共同提案となり、登録まで時間がかかったこともあり、その間の地元関係者の一喜一憂もニュースとして報じられた。

「“あまちゃん効果“で、アメ横にもファンが来られましたが一過性の現象でした。また『世界遺産』によって、国立西洋美術館に来られる観光客も増えました。でも芸術や文化探索で来たお客さんは、東京駅や銀座に向かう人も多い。動物園を訪れた方が、山を下りて近隣の商店街に足を伸ばすケースが最も高いのです」(二木氏)

地元関係者は、美術館や博物館、動物園がある一帯を「山」と呼び、商店街を「街」と呼ぶ。山といっても、歩いて石段で上り下りできる高さだが、関係者が“文化ゾーン“と呼ぶ山から、“商業ゾーン“と呼ぶ街に下りてきて食事や買い物をしてもらうのが、以前からの課題だった。