運用においては分散投資が王道で、「金融商品もリスクの低いものから高いものまであるので、徐々に慣らしていきましょう。最初からムリをせず、預金に近いような投資信託などから少しずつ始めて、個別株へ進むようなステップがおススメです」と八ツ井さん。
そのうえで、八ツ井さんはリスクについて注意を促す。
「ただ、いまは分散がなかなか利かない時代です。昔に比べて価格が連動しやすくなっていて、下がるときはいっせいに下がる。特にダウンサイドリスクのほうが、連鎖的に強くなりやすくなっています。昔は『バイ・アンド・ホールド』で、株などを分散して買ったら、あとは持っていればいいと言われましたが、いまの時代は危険だと思ったらすぐに避難すること。つまり損切りの視点を持つことが大きなポイントです」
損切りといわれても、これまた初心者には難しい。含み損のまま塩漬けしておいて、買った値段に戻るまで待つ人も多い。そこで八ツ井さんが運用の参考にするとよいというのが「行動経済学」だ。行動経済学はダニエル・カーネマンが02年にノーベル経済学賞を取ったもので、心理学と関係の深い経済学である。それによると、利益が出ている局面ではリスク回避的になり、売って現状の利益で満足する半面、損失が出ているときはリスク許容度が大きくなって、リスクを取ってでも値上がりを待つ傾向がある(図2参照)。
「つまり人は常に合理的な判断をするわけではないということです。特に値動きが大きくてリスクの高いいまは、相場で一喜一憂する難しいときでしょう。潔く損切りできるかが大事です」
ちなみに、行動経済学の概要を知るには、『経済は感情で動く』(マッテオ・モッテルリーニ著)、『行動経済学入門』(真壁昭夫著)、『図解雑学 行動経済学』(筒井義郎・山根承子共著)などがおススメだ。
そして最後に、八ツ井さんは次のように念を押す。
「私は『損小利大』という言葉が好きなのですが、お金は減らさなければ名目上は増えます。いったん減ると、元本に戻すのがすごく大変です。運用はそもそもリスクです。それに対して、家計改善は無リスクです。だから運用の優先順位は二番手。とにかくできることからコツコツやりましょう」
ムダな出費はないか、今日からでも見直してみてはどうだろう。