たとえば、自分の言い分が聞き入れられなかった元妻が「風邪をひいた」「あなたに会いたがらない」と子どもを会わせようとしないなどという事態は容易に想像できる。だから、感情的な決着をつけるために、当事者同士で話し合ったほうが将来的にプラスになるというのが吉田氏の考えだ。
そのためには、離婚に際して、妻が何を求めているのかを理解しなければいけない。離婚まで事がこじれているのだから、並大抵の苦労ではないだろうが、輝かしい未来のために、ぐっとこらえて耳を傾けよう。
このとき注意すべきは、守ろうとしすぎないことだ。できるだけ払うお金を少なくしようとか、自分に有利な条件を取り付けようと考えるのは無理もないこと。ただし、離婚後の生活を考えれば、妻は妻で譲れない部分がある。その主張をはねつけようとするあなたの姿勢は、妻にはあさましいとしか映らない。だから離婚協議においては、自分のなかで優先順位をつけなければいけない。「自分は離婚することによってこうなりたい」と、目標を最初に決め、こだわるのはそこだけにする。切り捨てていいところは切り捨てるという思い切りが必要だ。「守るな、捨てていけ」とは吉田氏の弁である。払うべき犠牲はしっかり払うと腹をくくっていったほうが、むしろ話はトントン拍子で進むのだ。
「ただし、離婚後のことを現実的に考えるというのはなかなか難しいもの。メリット・デメリットや、ライフプランについて、離婚したいという意思を告げる前に私たちのような専門家に相談してもいいでしょう」(吉田氏)
トクしたければ徹底的に資産を隠せ
さて、話がまとまりやすいにしても、負担は少ないに越したことはない。年金と退職金が半分持っていかれるのはしかたないにしても、何か方法はないものか。そこで考えたいのが、隠し資産、つまりはへそくりだ。
「夫婦の口座はきっちり分けておくべき。給料が出たら、別に用意した生活費のための口座に払い込む。残りのお金はうまく妻から隠しながらへそくり。お金のことでもめたくないと、全部開けっぴろげにしている人は、離婚のときが大変です。正直者の負けになる」
そう語るのは離婚カウンセラーの岡野あつこ氏だ。裁判になったとしても、裁判所は調査機関ではないので、自ら資産調査に乗り出すことはしない。銀行口座を持っていることが妻にバレれば、妻の弁護士から裁判所経由で口座情報を開示させられることがある。しかし、妻には思いもよらない銀行や支店に口座を持てば、その危険は回避することができる。銀行ではなくタンス預金となると、さらに発見は困難だ。かつて岡野氏のもとを訪れた人の中には、給与明細を偽造したうえでパートナーに嘘の収入を伝え、差額を貯めるほどに徹底していた人もいたという。