「英語ができて、仕事ができないのが一番困る」
海外で活躍する共通の要素としてこのコンビニチェーンの人事担当者はこう指摘する。
「語学はできることにこしたことがありませんが、アジアでは必ずしも英語ができればよいというものではありません。能力があれば通訳を使ってもマネジメントはできます。大事なのは日本で培ったビジネスセンスに加え、面倒見の良さと相手を理解し、受け入れることのできる度量の大きさだと思います」
また、グローバル人材について海外経験豊富な大手機械メーカーの人事担当役員はこう語る。
「正直言って、グローバル人材はいますかと問われれば、『当社には、世の中で言われるグローバル人材はいない』と答えるしかありません。一般的に卓越したリーダーを想定しますが、私は昔から疑問を持っています。加えて、英語が流暢で日本人のアイデンティティを持っている人とも言われますが、日本人としてのアイデンティティは日本人を20年やっていれば自然と身に付くと思いますし、日本の歴史・文化にしても、高校の教科書程度の知識があれば十分ではないですか。英語力にしてもうちのトップも『英語ができて、仕事ができないのが一番困る』と言っていますが、英語でコミュニケーションできる人がグローバル人材であるとは絶対に思いません。確固とした専門領域を持ち、それを相手に伝えようとする意欲があれば、言葉は自ずと付いてくるものだと思います」
グローバル人材といってもそんなに難しく考えることはない。職務に関する高い専門性と日本での実績がある“できる社員”であれば海外でも通用する可能性が高いということだ。
日本と異なる文化・風土・慣習などについては一定の知識が必要だが、実践でも学べるだろう。そうであれば、新卒採用でもことさらに「グローバル素養」があるかないかを重視する必要もないと思える。
国内でも仕事ができる専門性を修得させることが第一であり、できれば早いうちに海外に行かせてマネジメントの基礎スキルの経験を踏ませれば、徐々にグローバルに活躍する人材に育っていくのではないだろうか。