加熱する小池ブームを潰したい自民党
もちろんすんなり実施というわけにはいかないだろう。まずは住民投票のための条例を制定しなければならないが、いまだ自民党の議員が多い現在の都議会でそれが通るのか。また投票率に関係なく、有効投票のうち賛成が1票でも上回れば可決するとなると、その「民意」の意味が問われることにもなりかねない。
もっとも問題は、住民投票に訴えることで小池知事が政治判断を放棄したととらえられないことだ。
しかし豊洲移転問題こそ、政治的判断が求められる問題だ。「安全」はさまざまな検査結果の数字で担保されるが、「安心」はそうしたデータで得られるものではない。それを担保できるのは、強力な政治的リーダーシップ。住民投票を行い、その結果をなぞるだけでは、リーダーの判断とはいえない。
一方で小池知事が期待するのは、東京都議選への効果だろう。
2月5日の千代田区長選では石川雅己区長を大勝に導いた小池知事は、次期都議選での目標数を上げ、単独過半数も狙っていると言われている。その候補の中心となるのは小池知事にはその政治信条に共鳴した「希望の塾」の塾員たちで、選抜試験を経て都議選コースの受講数は約300人にものぼる。
それ以外にも、小池知事の下にはさまざまな人が馳せ参じている。自民党からは山内晃都議や木村基成都議が小池知事の軍門に下り、民進党からは元都議の伊藤悠氏や増子博樹氏が都民ファーストの会に入った。2月14日には都議会民進党と民進党都議団が合流し、「東京改革議員団」を結成。会派名を小池知事が主唱する「東京大改革」にちなむ一方で、「民進党」を消している。
まるで「小池、小池と草木もなびく」様子だが、これに危機感を示しているのが自民党だ。二階俊博幹事長は2月6日、「小池知事を念頭に置いているわけではない」と保留しつつも、「自民党もやがて反転攻勢にとりかかっていけるように、(東京)都連の奮起を期待したい」と述べている。
そしてここに来て囁かれているのが、都議選にあわせた解散総選挙説だ。そこには、加熱する小池ブームを潰したい自民党の狙いが見て取れる。だが、そうした逆境を逆手に取るのも、小池知事の強みだ。百条委員会がどうなるのか。都民ファーストの会はどのくらい都議選候補を擁立するのか。小池知事はさまざまな見せ場を作っていくだろう。
いずれにしろ、小池知事の思惑で都政のみならず国政ですら、動いていることは間違いない。