50歳を目前にして銀行を退職したのは、『平家物語』の「見るべきほどのことは見つ」という心境になったから。私が入行した当時、社会的に問題視されていたのが「個の疎外」。サラリーマンは組織に入ると、その価値構造に染まって個を失う。私は「組織内存在」になりつつ、「組織外存在」の目でその様子を観察し、歌での表現を続けました。ただ、組織の中で起きることはほぼ見え、学生時代にやり残した哲学を学びに大学に戻ったのです。

40代になって人生の後半戦を迎え、自分が進むべき道について迷っている人もいるはずです。これも処世訓ですが、「人間は自分が好きで、かつ得手なものを仕事にするのが一番いい」。普通はそれまで続けてきた仕事が最も得手なはずですが、本当は別に何かあるのかもしれない。40代は、それを見極めるいいタイミングでしょう。

▼小椋 佳さんに学ぶ40代の振る舞い方「3カ条」

1. 自分の手柄を上司の手柄に
やりたいことをするための日頃の「環境づくり」に徹する
2. 24時間いつも意識を働かせる
仕事も、創作も常に意識していることで新しいネタが見つかる
3. 自分が好きで得意なものを仕事にす
人生の後半戦を迎える40代は見極めるのにいい時期

小椋 佳
作詞・作曲家。1944年生まれ。67年、東京大学卒業後、日本勧業銀行(現・みずほ銀行)に入行。71年に初アルバム「青春・砂漠の少年」を発表。3作目のアルバム「彷徨」が100万枚のセールスを突破。「シクラメンのかほり」「俺たちの旅」「愛燦燦」など数多くのヒット曲を生み出す。93年に退職。現在も創作活動を精力的に行っている。
(村上 敬=構成 柳井一隆=撮影)
関連記事
40代は「もっと贅沢したい」誘惑に打ち勝ちなさい
40代から始まる退職後の人生への準備
人事部の告白「40代で終わる人、役員になれる人」
40代で畑づくりを始め、ワイナリーのオーナーに転身
20代女性とつき合える40代男の条件