組織の大きさに応じ、マネジメントを変えることが必須
HISを創業し、社員が100人になるまでは顔と名前が一致していました。そうなれば、それぞれの人の性格を把握し、指示を出すことも可能です。
本気で相手のことを大切にする気持ちがあれば、叱ってもいいと思います。しかし、同じ言葉で叱っても、発奮して食らいついてくる人もいれば、意気消沈する人もいる。言いすぎると辞めてしまう人もいます。難しいものです。
社員が300人に増えると、もはや顔と名前が一致しません。ちょうど店頭公開した頃です。直接、指揮することも不可能になりました。当然、マネジメントを変えなければいけません。
ここで大切になるのが総務人事の組織です。人事施策や教育、社員コミュニケーションを推進する制度が必要になってきます。そのために、総務人事の責任者に優秀な社員をあてはめる。専門性を持っている社員が業務に当たれば、私が直接指揮するよりもずっといいわけです。続けて営業、開発、経理といった部門の長にも優秀な人材を充てていきました。
人が増えると自ずとマネジメントを変えなければいけませんが、変えてはいけないものもあります。たとえば、支店長に対しては、心得をマニュアル化し、落としていきました。心得とは、「人をだましてはいけない」「バランスを大切にする」といったことです。
組織が大きくなればなるほど、目標や夢は伝わりにくくなります。やり方は時代に合った若い人間に任せますが、ポリシーとか考え方を組織に浸透させていく――このことは、これからも続ける必要があります。
1951年、大阪府生まれ。旧西ドイツ・マインツ大学留学後、80年にエイチ・アイ・エスの前身となるインターナショナルツアーズを設立。2010年ハウステンボス代表取締役社長に就任。