一方で、「家族サービス」にお金をかけると答えた人が9人もいるのは印象的です。事業を伸ばすには家族の理解と協力が欠かせず、家庭内にトラブルを抱えていると事業どころではなくなってしまいますから、会社を大きくしている経営者ほど家族を大事にします。それから、みなさん勉強熱心です。本を読んだり、セミナーに出かけたりというのはもちろん、国内外を家族旅行するのも市場調査にもつながりますから、経験を豊かにするお金の使い方はとてもよいことです。

お金は魔物とも言います。中国の『書経』には「物を弄べば志を喪い、人を弄べば徳を喪う」とあります。いい服を着て、美味しいものを食べ、高級車を乗り回し……ということばかりしていると、志を失う。上場すれば、一般的には最低でも億単位のお金が入りますが、急に生活を派手にすると身を持ち崩す原因にもなります。事業そっちのけで遊んでばかりいる経営者を従業員も尊敬できないでしょうし、金銭感覚があまりに一般人と乖離してしまうと、事業にもマイナスでしょう。

電車賃にしても、食べ物の値段にしても、世の中全体の価格は一般家庭を基準にしてつくられています。経営者になってリッチになると、どうしても生活全体の水準が上がって贅沢になってしまう。そんなときに自分の感覚が狂ってきていることに気づけないと、みっともないですよね。

自由回答欄を見ても「成り金っぽく見られない」ように気をつけるとか、「使うべきところで使う」など、お金を使うことの難しさを感じている人が多いようです。

「公私の区別を明確にする」と書いている人がいますが、これはとても重要な点です。私もセミナーで経営者にはよく、「自分のお金を使うか、会社のお金を使うかで迷ったときは、自分のお金を使いなさい」と話しています。

社長が自腹でおごってくれているのか、会社のお金でおごってくれているのか、は社員もよく見ています。売り上げや利益が立たず、自分自身の給料を十分にとれなくなってしまうと、経営者はつい会社のお金を使いたくなってしまうもの。そこで公私混同すると、会社がますます傾いて悪循環に陥ります。そういう意味でも、日頃から公私の区別を明確にしておくのはいいことだと思います。