危険なのは「丁寧で細かい」「文の長い」上司
取材をしていると「10時間労働」意識の上司がごく一般的という印象が強いが、世の中には、それを上回る長時間残業を強いるタイプの上司も存在する。
その筆頭格が「丁寧で細かすぎる上司」だ。事務機器メーカーの人事担当者はこう説明する。
「課長の中には上層部や顧客に提案する資料の品質にやたらこだわる人がいます。何でもパワーポイントにしないと気がすまないらしいのですが、ドキュメントの品質に社内的な決まりがあるわけでもなく、資料作成に時間をかけすぎているのです」
次のようなケースでも「丁寧で細かい」ことが残業時間を長くすることがある。
「職場の会議や打ち合わせを行う場合、全員が揃わないとダメだという考え方で、外回りの人の帰りを待って会議を始めます。そのせいで、終了時間は夜遅くなることもあります。職場の平均残業時間も60時間を超えることも珍しくありません」(前同)
もっと生産性の高い仕事ならよいが、この程度の仕事でつきあわされる部下もたまったものではないに違いない。ストレスも相当溜まっているのではないか。
「自身の考えを言語化できない上司」も長時間残業を強いる典型的なタイプだ。金融業の人事担当者はこう語る。
「部門長から振られた業務の方針について、自分の考えやアイデアを盛り込んだ業務内容を具体的に指示するのが課長の役割です。ところが、ある課長は自分の考えをそれなりに文章化するのですが、文章がやたらに長く部下も飲み込めないことがよくあります」
簡単に言えば、部下は何をすればいいのかわからない。結局、その課長は部下と一人ひとり面談して伝えることになるのだが……。
「本人はフェイス・トゥー・フェイスを大事にしていると言うが、その場では双方がわかったつもりになっても、間違った解釈をしたり、その都度上司と確認を繰り返したりと、不必要な時間を費やすことになる。上司が忙しくてつかまらなければ仕事が進まず、延々と時間だけを浪費していくことになります」(前同)
なぜ、こんな人が管理職になっているのか不思議であるが、ある人事担当者によれば「論理的思考力、文章読解力や文章表現力が苦手な管理職も少なくない」ということだ。これは、経営層や人事部の「人を見る目のなさ」という問題にもなりそうだ。
そもそも長時間残業が前提となっているからこそ、こうした上司が野放しになっているのだろう。こんな上司に仕える部下は、不幸というしかない。