一方、各都道府県は2015年、病床機能報告と将来推計をもとに、地域別に25年の医療需要と機能ごとの病床数、それを実現するための施策を盛り込んだ「地域医療構想」を作成。

「地域によってやるべきことは違いますが、人口が減るので現在より病院の数やベッド数が増えることはありません。高度急性期に偏りすぎている医療資源を回復期や慢性期に移行し、なおかつ、慢性期の入院日数を大幅に短縮化する必要があります。そのためには在宅ケアの充実が非常に重要です。10年先を見越してすでに準備を始めている自治体と対策のない自治体では、医療サービスだけではなく、高齢期の暮らしの質そのものに大きな差が出るのは間違いありません」。そう断言するのは、産業医科大学公衆衛生学教室の松田晋哉教授だ。

高橋教授は、「寝たきりや不必要な延命措置を受けてまで生きていたくないという人が増えています。欧米のように、無理な食事介助をせず、食べられなくなったら寝たきりになる前に枯れるように死んでいく自然死的な亡くなり方を日本全体で受け入れられるようになると、個人の人生の満足度は下げずに現状の医療と介護の資源量で何とかなる地域も増えてくる」と話す。

30年、世界中が未経験の人口減少と多死社会を迎える日本のどこに住むのか。どうやら、早いうちから考え準備しておいたほうがよさそうだ。