しかし、ここでわかるのは、負け続けた場合には賭け金が雪だるま式に増えるので、最初に準備する軍資金が重要になるということ。図に示したように、第11レースまで負けた場合、最終の第12レースでの賭け金の合計は40万9500円になる。仮に軍資金10万円でスタートしたとすると、9回連続負けると、トータル5万1100円の負けとなり、次の第10レースの賭け金(5万1200円)が払えず、ここでゲームオーバーだ。
逆に、どのレースで勝っても儲けは100円だけ。軍資金10万円で儲けが100円では、とても魅力ある必勝法とはいえない。ハイリスク・ローリターンのギャンブルなのだ。
ただ、実際の競馬ではオッズが2倍以下から何十、何百倍まで変動する。もし10倍のオッズのレースに勝てば、儲けは大きい。今回の例でいえば、5回目に1600円を賭けてオッズ10倍ならば、「16000-3100=12900円」の儲けになる。ハイリスク・ハイリターンで、これならトライする価値があるかもしれない。ただし、いうまでもなく、オッズが大きくなれば、当たる確率は小さくなる。
結局、マーチンゲイル法を競馬で実践するのは、“ハイリスク・あやふやリターン”ということになる。それでも競馬ファンならば、一度試してみるのも一興だろう。
そもそも「確率」というのは、ギャンブルから生まれたものなのだ。フランスの哲学者ブレーズ・パスカルが、貴族から、賭け金の配分の仕方について尋ねられ、その答えを見つけたのが確率論の始まりだといわれている。
そして、いまや世の中のあらゆるところに、確率の理論は応用されている。たとえば、気象観測のアメダスの予報システムや、生命保険の設計などである。ギャンブルとは無縁の人でも、ギャンブルから生まれた確率の恩恵を日常的に受けているのだ。