看護の世界でも、一般大学生が夏休みに参加するようなインターンシップが盛んに行われていて、学生たちは「実習」とは別に、将来働く先を選ぶために病院の現場を見て回っているそうだ。濱田氏は最近の若い看護師について、こう評する。

「かつての『白衣の天使』幻想はほとんど消えて、もっとドライに経済的な『安定』を求めて看護師になる人が増えていると言う方もいますが、実際には患者さんと関わっていくうちに、大多数の看護師は、自分の役割はなんなのか考えるようになります。いろいろな研修に出ながら今の医療制度を知り、これからの看護師に求められる仕事はこれだと気づき、その社会的要請に応えようとします。なんだかんだ言っても、ものすごく真面目な人の巨大な集まりが看護師の世界なんですよ」

先に「3K」や「9K」の話題を振ったが、そうしたネガティブ要素がたくさんあっても、実はそう簡単に辞めないのが看護師だ。医療危機を煽る文脈でしばしば看護師の離職率の高さが指摘されるが、データを冷静に見ると意外に彼女ら、彼らは辞めていない。

日本看護協会調べによると、2012年の看護職員離職率は11.0%で、新卒に限れば7.9%だ。比して、厚労省調べによると、同年の一般労働者の離職率は11.5%、同省別調べで新卒の離職率は13.0%。なんにせよ、世間一般の平均より辞めていないのである。「K」だらけの大変な仕事であっても、頑張り続ける看護師が大半なのだ。濱田氏は言う。

「私自身、女が1人で生きていける仕事はどれか、という発想から看護師になりました。最初はそうでしたが、実際に仕事をしてみると、看護の奥は深かった。臨床の現場はストレスフルです。こなさなきゃいけない業務が大量で、その一つにでも間違いがあったら、患者さんの命に関わります。まさに緊張の連続です。そんな現場で目の前の患者さんの生活を支えるために何ができるかを追い求める。それが看護師の仕事だと私は思うのですが、やっぱりやりがいに満ちているんですよ。だから大変でも頑張れちゃう」