千葉、埼玉での「入所」は絶望的に
ベッドタウンの医療事情がいまのところ大きな問題になっていないのは、住民が比較的若く、病院にかかる場面が少ないからだ。これから高齢化が進むと、定年を迎えた団塊世代が次々と地元の病院に押し寄せてくる。さらに年をとって後期高齢者となれば、有病率が上がり、ベッドタウンの医療需要は加速度的に高まるといえる。
危機レベルが高い地域だけでなく、隣接地域でも注意が必要だ。医師不足や介護難民の発生により、周辺から高齢者が流入してくる恐れがあるからだ。
たとえば介護ランクで最悪レベルとなった「新宿区、中野区、杉並区」や「品川区、大田区」は、現在でも1000人あたりの高齢者住居数が70床以下と非常に厳しい状況となっている。これらの地域では、いまのところ近隣地域で高齢者向け住居を手当てできているため、問題は深刻化していない。ところが、こうした東京周辺の収容能力の高い地域は、今後、後期高齢者が激増する地域でもある。東京都では2010年からの30年で、後期高齢者は1.7倍になるが、埼玉県と神奈川県では2倍、千葉県では1.9倍と、周辺地域のほうが高齢者の増加スピードがはやい。その結果、周辺部の受け入れ余力はいまほどにはなくなる。
東京の施設による介護は、そう遠くない将来、とても厳しい状況になることが強く予想される。危険な首都圏から余力のある地域に引っ越す選択肢も考慮する価値があるだろう。