大富豪の滞在中、新井さんたちバトラーは24時間態勢。いつ何時、思いがけないオーダーがくるかわからない。

「思い立ったら“いますぐに”と希望されます。基本的に待つということがお嫌いです」

あるときには、大富豪が本国へ帰る直前に「お土産にカルピスウォーター500本とマルカワのいちごガム1000個を用意してくれ」と頼まれた。

成田出発まで2時間。新井さんは至急、延べ12人のスタッフを動員し、成田までの道のりにあるコンビニや量販店に電話をかけまくる。ワゴン車で商品のある店をまわりつつ成田空港へ駆けつけ、なんとか大富豪の希望に応えたそうだ。

「突発的なオーダーを予感したらスタッフに声をかけておきます。お客様の立場で考えれば、予測と準備ができます。要は、相手に“思い”をやる、思いやりです」

いまはその大富豪の来日する前には、カルピスウォーターとガムが用意してあるそうだ。

穏やかに振る舞う執事も、水面下では休むことなく足を動かしつづけていることがわかるだろう。

【QUESTION】世界中の大富豪に共通した時間術は?
大富豪たちの会議は「10分」です。いくつも会社を経営する大富豪は、役員会議も10分間で終わらせます。10分しかなければ、出席者は資料と発言を完璧に準備しますし、その場で考えずに結論だけ話す。高い緊張感と会議効率を狙ったルールだと思います。また趣味など好きなことでも一定の時間がくるとぴたっとやめてしまう習慣があります。決してダラダラしません。
日本バトラー&コンシェルジュ代表取締役社長 新井直之
米国企業日本法人勤務を経て、日本バトラー&コンシェルジュを設立。自らも執事として大富豪を担当する傍ら、企業向けにコンサル業務、講演などを行う。映画「謎解きはディナーのあとで」「黒執事」では俳優の所作指導も担当。式典を担当。
(伊田欣司=構成 相澤 正=撮影)
関連記事
総資産50億円以上! バトラーが見た「VIPたちの生き方」
東の華僑vs西のユダヤ「金運を掴む」大富豪の教え【1】
大富豪の24時間に見る「時間とお金」の共通点
モナコ在住、仕事は古城売買。噂の日本人富豪の正体とは?
世界の大金持ちは、どんな金融商品を選ぶのか