(1)「違い」を意識する

アウトドア・シューズ製造会社のデッカーズ・アウトドアの生産・調達・開発担当上級副社長、パット・デバニーは、先日、会議のために広東省の同社中国事務所を訪れたとき、ランチルームに立ち寄って女性労働者たちと話をする機会を持った。

「これらの女性は中国全土から来ており、出身地域によって注文する食べ物が違う」と、デバニーは言う。「会話の中で、山ねずみの味の違いという話が出た。『穀物で育てたねずみのほうが果物で育てたものよりおいしいのか。山ねずみは猫のような味がするのか。アヒルの足はちゃんと料理すればチキンの足に負けないくらいかみごたえがあるのか』等々の話だった」。

この会話は仕事に関係してはいなかったが、デバニーにとっては、グローバル環境におけるマネジメントについての単純ながら深い真実を浮き彫りにするものだった。グローバル企業を構成している人々の間には大きな文化的相違がある。外国の職場で人々がどのように考え、仕事をし、食事をし、交流するのかを理解することは、成功する事業所を築くためには不可欠だ。

中国の市場経済の発展にともない、デバニーは中国に行くのは初めてという多くのアメリカ人マネジャーを中国に連れていった。その経験から、新しい土地の微妙だがきわめて重要な文化的特徴を彼らに教えることがいかに重要かを理解している。

デバニーのようなメンタリング・スキルを持つ幹部は、とりわけ中小企業では不足していると、ティーガーデンは述べている。

(2)新しいアイデアを受け入れる姿勢

中国のような新興市場が拡大を続けるなか、企業幹部はこれらの国のマネジメント・スキルを活用したり、ある国で経験を積んだ国際マネジャーを別の国に移動させたりすることも積極的に行わなければならない。

「アメリカを拠点にしている人材を海外に移動させるのもいいが、中国人マネジャーやインド人マネジャーをアメリカやヨーロッパや南米に移動させて、彼らのスキルも全体に採り入れてはどうだろう」

1例を挙げると、メアリー・ケイ・コスメティックスは、中国に事業所を設立したものの、中国では他国でやっているような訪問販売ができないことに気づいた。中国政府はアムウェイの販売員が国中を荒らし回った1件に懲りて、そうした販売方法を禁止していたのである。そのため、メアリー・ケイの中国人マネジャーたちは中国での新しい販売システムを編み出した。さらに、優秀な中国人マーケティング・マネジャーが中心になって中価格帯の新製品を開発、発売し、この製品は中国のデパートで売れ筋商品になった。

メアリー・ケイはこの中国人マーケティング・マネジャーをダラスの本社に連れてきて、中国で行ったことをそこで再現させるとともに、他のマネジャーたちが同社の他の国々の事業所で同じことをするにはどうすればよいかを理解する手助けをさせた。