褒め方にもコツがある。まず褒めるのは素質・結果・成績ではなく、その行動・努力を褒めること。

「素質を褒めると、その素質よりももっと上のものが要求される場面に直面すると、チャレンジを避ける傾向が出てきます。努力を褒めていくと、難しい問題にもチャレンジしたり、失敗しても果敢に挑戦し続けることができる。つまり、結果や成績につながる行動を見つけ出して褒めるのが上司の能力ともいえます」(篠原教授)

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集中しようとするときにカギを握る大脳基底核

線条体でのドーパミンの活動は、行動と報酬の繰り返しによって習慣化され、やる気が出やすくなる。線条体の活動は報酬が大きいほど活発になる。つまりご褒美は大きいほうが効くが、線条体の活動は報酬の増大とともに頭打ちになるから、大きな褒美を1回与えるよりも、小さなご褒美をこまめに与えるほうが効果的なのだとか。では、褒めっぱなしでいいのだろうか。

「サルを使った実験では、いつも必ず得られる報酬には慣れて、反応がなくなる。つまり報酬を与えられてもそんなにうれしくなくなってしまう。では、やる気を維持するためにはどうすればよいか。報酬は2回に1回くらいがいいということです。〈あれ? 褒められない〉という失意があったほうがドーパミン神経はきちんと反応し続ける。最初は立て続けに褒める必要がありますが、ある時点からは褒めたり褒めなかったりする。これは教育的効果ももたらして、ちょっと我慢する機会を与えると、セロトニン神経の活動が高まり、次の報酬をイライラせずに待てるようになる」(篠原教授)

仕事も恋愛も脳の働きは同じ。脳は押したり引いたりの駆け引きに弱いようだ。また同時進行で仕事をするほうが効率的でも、処理できるのはコレ、アレ、ソレ、その他のせいぜい4つが限度ということも知っておこう。

「4つを超えると脳のメモの空き容量がなくなる。失恋や借金を抱えている精神状態と同じで創造的なパフォーマンスが落ちる。脳の容量が空いていない状態のほうが向いているのは単純作業。余計なことを考えず、ひたすら入力する作業などには向いています」

諏訪東京理科大学教授 篠原菊紀
1960年、長野県生まれ。東京大学卒業後、東京理科大学諏訪短期大学助教授を経て、現職。脳計測器多チャンネルNIRSを使って、脳活動を調べている。『一生クビにならない脳』ほか著書多数。
 
本郷赤門前クリニック院長 吉田たかよし
1964年生まれ。東京大学大学院で生命工学を研究しながら国家公務員I種経済職試験に合格。NHKアナウンサー、代議士秘書を経て、医師免許取得。日本初の受験生専門心療内科クリニックを開設。
(遠藤成=撮影)
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