つまり、チェスがうまくなるには、どれだけ練習に時間をかけたかということとともに、どのように時間を使ったかということにかかってくるのだ。
さて、以上のチェスの話をビジネスマンに置き換えるとどうなるだろうか。知識を身につけるために本を読むビジネスマンは多い。上司から「もっと本を読んで勉強しろ」と言われる人もいるだろう。しかしテニスがうまくなりたい人が錦織圭の本を読んだだけでうまくなりはしない。座学で知識を吸収することは確かに重要なのだが、頭を使いながら本を読まなければいざというときに役立てることはできない。
そのためにも抽象的なことが書いてあるものより、具体的なケースが詳しく書いてある本を選ぶべきだ。書いてあることをもとに、今後自分が遭遇するかもしれないケースについて想像して、その状況にあって自分がどう行動するかを考えながら読むのだ。
人からフィードバックをもらったときもそうだ。人の話を聞いて「そうだよね」と思うだけでは能力向上は図れない。今以上の能力を身につけたいのであれば一歩踏み込んだ努力が求められる。プレゼンテーションの練習にしても、人から指摘をもらうだけでなく、実際のプレゼンの様子を録画して確認するぐらいのことはやっておきたい。その際は聴衆の反応もきちんとチェックして、どのぐらい自分の話に注目しているか、話のどこに惹きつけられているかなどをつぶさに分析すべきだ。その分析をもとに、今回うまくいかなかったところを次回はどのように改良するかを考えるのだ。