仕事の成果に加え、人を大事にする人を登用せよ
例えば、ワールドでは、期末・期初に部門長は大勢の社員の前で、自分があげてきた組織の成果とその方法、あるいは、今期の方針と戦略についてプレゼンテーションをする仕組みがある。それは、発表前に社内調整を終えた後の、形式的なものではない。経営者を含め、出席する社員から評価を受けるという、非常にプレッシャーのかかる場である。部門長としての自分の実力が丸裸にされ、チェックされる場なのである。
すでに10年以上続けている仕組みなのだが、運用当初は、その厳しさに耐えかね、自ら降格を申し出る人も出てくるほどであった。
ベネッセでは、インタビュー中、社員が口を揃えて「上司が尊敬できるほど働く」と答えてくれた。ある執行役員に話を聞くと、「仕事ができるだけではリーダーにしない。人を大事にできない人はリーダーにしない」というほど、リーダー選びを慎重かつ健全に行っていた。
いっけん、当たり前のことかもしれないが、こうした運用が徹底できていない会社は多い。ラクチン型は、注意する人が少なくなる「上」ほど実行しやすいタダ乗りである。また、上がラクをしていれば、下もそれを見習う。ラクチン型がはびこらないようにするためには、リーダーの登用と運用の原理原則を徹底することが必要である。
(2)アレオレ詐欺型への処方箋
アレオレ詐欺が通用する職場には、大きく2つの原因がある。
一つは、評価制度が結果偏重になっていること。それによって、評価者がそのプロセスに関心を寄せなくなり、言ったもん勝ちになってしまうことである。
二つめは、上司の一存だけで評価を下せる仕組みになっていることである。この場合、部下は、その上司にだけ、いい子ちゃんのふりをすれば高い評価を得るチャンスがある。それゆえ、取材中、アレオレ詐欺型社員の話が出てくると、決まってその人は、上に対する態度と同僚に対する態度が違う、あるいは上が見ているときとそうでないときの仕事ぶりが違う、という話が一緒に出てくる。