成長のチャンスを逃さずつかむには
会社に入ってからもその習慣は変わりませんでした。現場の担当者として仕事をするだけでなく、上司の目線で、さらには経営者の目線で、企業とはどうあるべきかを常に考えていました。目上の人とのつき合いにも物怖じしない性格で、若手の営業マン時代から一流企業のトップにもどんどん会いに行き、いいお付き合いをさせていただいたことで拓けた道もあります。
その人が伸びるかどうかは、このように育ってきた環境にも大きく左右される一方で、やはり最後は、本人がどう仕事と向き合うかが大事だと思います。一つは、先ほども申し上げたように、問題意識を持ちながら仕事に取り組む姿勢です。問題を解決しようとする改善意欲から、進化が生まれます。
そしてもう一つは、具体的な夢や目標、志を持つことです。私自身、これまでをふり返ってみても、入社早々に左遷されて出世コースから外れたにも関わらず、会社が存続の危機を迎えた時に社長の椅子がまわってきたのは、まさに“運とツキ”としか言いようがありません。運とツキという、なんとも説明しにくいものによって、人生の8割は突き動かされているのだとつくづく感じます。
そして、“運とツキ”をつかむには、具体的な夢や目標を持っていることが大切です。具体的な夢や目標があれば、それに関わる情報や出会いに触れたときに、逃さずチャンスをつかみ、自分の成長につなげることができるはずです。
セーレン会長兼最高経営責任者
1940年、福井県生まれ。62年明治大学経営学部卒、同年福井精練加工(現セーレン)入社。87年社長就任。2003年より最高執行責任者(COO)兼務。05年より最高経営責任者(CEO)兼務。05年に買収したカネボウの繊維部門をわずか2年で黒字化させる。14年より現職。セーレン http://www.seiren.com/