──どうすれば相手の協力的な感情を高められるのでしょう。
最も効果的なのは、交渉を敵対的なプロセスから、交渉を行っている者同士が互いに相手を問題解決のために協力している仲間とみなすようなプロセスに変える行動だ。
向き合って座るのではなく隣り合わせに座るのも一案だろう。一方が他方に助言を求めるのも単純だが効果的な方法の1つだろう。、ロジャー・フィッシャーが、「交渉の壁」に悩める企業幹部にアドバイスを送る。まず、取り組むべきは、よくある「3つのつまずき」を克服することだ。
──企業幹部にとって交渉の最も難しい点はどこでしょう。
企業幹部にとって最も難しい課題は、たいてい最も数量化しにくいものだ。こちらが相手に敬意を持ち、耳を傾け、高く評価し、理解し、重視していることを確信させながら、同時に相手がこちらの話に耳を傾け、理解し、敬意を持ち、重視し、高く評価するようにもっていくにはどうすればよいか、という問題だ。
企業幹部は交渉の骨組みを理解し、どこがまずいのかを診断する必要がある。「コミュニケーションはどうか。人間関係はどうか」とチェックしていくわけだ。
最も重要なのは「自分は相手側の利害を理解しているか」と自問してみることだ。相手の立場ではなく、相手が本当に重視していること、求めていること、必要としていること、望んでいること、恐れていることをね。
──企業幹部がよくつまずく点はどこでしょう。
多くの企業幹部がもっとうまくやってしかるべき分野が3つある。第1に、彼らは交渉相手を敵ととらえがちだ。第2に、金銭の問題に焦点をあてすぎる。そして第3に、独創性が足りない。
──第1の点、交渉相手を敵とみなす傾向については、両者の利害が異なるのは確かではありませんか。
もちろんそうだ。一方は高く売りたいし、他方は安く買いたいのだから。それでもどちらの側も、双方が妥当とみなす合意に効率よく達したいと思っている。しかも通常は、どちらの側も相手に対する好感情が残るような形で合意したいと思っている。一方が他方を敵として扱ったら、相手はまさしく敵になる。自分たちを敵とみなしている人間は、最高の仕事仲間にはならないからね。
政治の世界では、たとえばジョージ・W・ブッシュは、脅しをかけて相手に無理やり自分の立場を受け入れさせるのが最も効果的だと言わんばかりの行動をとることがある。しかし、そうしたやり方では政治的代償が高くつきすぎるおそれがある。ブッシュは一方的な要求をすることによって、サダム・フセインとの交渉という道を探るチャンスを捨てたのだ。
ビジネスの交渉では、相手の利益は何かを把握し、その利益を理解するとともに、自分の利益を相手に理解させることが決定的に重要だ。そのうえで、それらの利益をつき合わせて、双方の必須の利益を満たす方法を探していくわけだ。