時間の重要性は、一層明確だ。私と同じように30年ほど前に起業した人の中には、いまだに5人、10人の規模で経営している人がいる。一方わが社は、この30年間で1万人規模の企業となった。経営にはそれぞれのスタイルがある。必ずしも私の経営が優れているとはいえないだろう。ただし、同じ30年という時間でこれだけ大きな差がつくのは、時間の過ごし方が違ったからだ。万人に平等に与えられている1日24時間という時間をいかに過ごすかによって、成果が5倍、10倍、時には100倍にもなるのだ。
では、他者より常に一歩先んじて、成果にレバレッジをかけるにはどうすればいいのだろうか。
答えは簡単である。わが国より5年、10年先行している成功事例を海外から探し出し、それをわがものとすればいい。そうすることで事業を発案し、財やサービスを開発するのにかかる5年、10年という歳月をぐっと圧縮することが可能になる。
私は10年、長崎県佐世保市のテーマパーク「ハウステンボス」の再建を引き受けた。設立以来、18年にわたり赤字が続いていたが、私は1年で黒字化に成功した。成功のひとつの理由が「海外の成功事例の導入」だった。
そもそもハウステンボスの経営難には、明白に3つの理由があった。これは東京ディズニーリゾート(TDR)と比較するとわかりやすい。
1点目は市場規模の小ささ。首都圏にあるTDRに対して、佐世保市の人口は約25万人、近くの長崎市は約44万人で、足し合わせても100万人にすら届かない。その一方で施設面積は152万平方メートルと、TDRの1.6倍もある。
2点目はアクセスの悪さ。博多駅からは2時間、長崎空港からは1時間。TDRは東京駅から20分、羽田空港から40分で行ける。
3点目はブランド力、すなわちイベント開催能力の乏しさだ。TDRは何十年という歳月をかけてイベントを磨き上げている。ハウステンボスの売り物はオランダ風の風景だけで、目玉となるイベントが乏しかった。夏場は花が咲くからまだいいが、冬場は寒くて暗くて、誰も行きたがらない。