悪条件の下請け仕事が減り、やる気UP

言われたものを、言われた通りにつくっていた下請けの現場。そこにゼロからものをつくり出す感性を植えつけるのは、並大抵のことではない。

「この20年のうち、最初の10年は私が主導する形で商品開発を進めていました」と原さん。「しかし、だんだん社内の雰囲気が変わってきました」。

当初、自社製品の売り上げは、会社の年商の2、3割を占めるようになれば十分と考えていた。しかし、それが達成されると、まず本来業務である下請けの受注の仕方が変わってきた。

「多少の余裕ができたので、条件の悪い下請け仕事を無理して請けなくてもよくなった。これは、従業員のやる気に大きく影響しましたね」(原さん)

自社ブランド育て上げ20年以上か下請けから脱却。 タップを皮切りに安価なアイデア商品を連発。国内唯一の懐中電灯メーカーでもある。

一方、従業員にとって、オリジナル商品はみずからが腹を痛めて産んだ子のようなもの。市場に出て、しかも売れれば嬉しいことこの上ない。それが次の新商品への弾みになる。その好循環が、スマイルキッズを年商の5割にまで成長させたと原さんは見ている。

自社ブランドの立ち上げを望む下請け企業は多い。しかし、成功例はそう多くない。同社の成功の要は何か。改めて問い質してみた。原さんは、「社長の独断を遮二無二やらせるという体質が、当社にはないこと」と答えた。

「自社商品は売れなければ損失も大きい。失敗した会社を見ると、ワンマン社長が独断で新商品の開発を進め、やり方がまずくてもそれを誰も止められなかった例が多いようです。うちは社長が私の実兄なので、それはない」

開発担当の弟が先走れば、兄がブレーキを。主に下請け業務担当の兄が、新商品開発に踏み出すことに二の足を踏めば、弟が背中を押す。「対等に意見し合える人が、経営者側にいるかどうかが大きいと思います」と原さん。

本格的に取り組んで約20年、仕事の質の転換をともなう下請け脱却は簡単ではないが、この成功例に勇気づけられる経営者も少なくないはずだ。

(浮田輝雄=撮影)
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