一番難しいのは古い考えを忘れること

2つ目の名言は、英国の経済学者、ジョン・メイナード・ケインズのものです。

「この世で一番難しいのは新しい考えを受け入れることではなく、古い考えを忘れることだ。」

変化に上手く対応するには、リスクを背負わなければなりません。古く、慣れ親しんだやり方を捨て、新しい方法を受け入れる必要があります。これは決して簡単なことではありません。生命保険という、比較的保守性の強い業界ではなおさらです。

先日シリコンバレーへの出張から戻ってきたばかりですが、1週間の滞在期間中メットライフの幹部陣でソーシャルメディアからヘルステクノロジー、そしてビッグデータに至るさまざまな業界から20社以上の方と会ってきました。この会合で学んだ最も重要なことの一つが、今日のデジタル世界において、私たちが気にかける必要のある相手は従来の競合他社だけではない、ということです。新規参入を考える企業は、老舗企業とその顧客の間に自らを位置づけることで、新しいビジネスモデルを創出しているからです。

一つ例を挙げてみましょう。自分たちの生活のあらゆる側面を記録し、共有したいというデジタル時代の消費者の願いを利用して、JAWBONEやFitbitなどの「ウェアラブル技術」の企業は、歩数や睡眠時間といった健康とフィットネスに関する個人データをリアルタイムでユーザーに提供しています。これは、生命保険会社にとって何を意味するでしょうか。

生命保険料は、年齢、性別、職業などの一般的なデータにもとづいて決定され、通常年に一回見直されています。では、この保険料を、ウェアラブル技術を通して個人のデータをもとにカスタマイズし、健康改善への努力に報いるようリアルタイムで修正できるとしたらどうでしょうか。週に3回ジョギングをすることで自動的に保険料が下がれば、エクササイズのモチベーションも上がるかもしれません。

これは、米国ではすでに実施されています。雇用主から支給されたウェアラブルデバイスを使用することに従業員が合意すると、健康保険料が減額の対象になる、という一部の企業での取り組みです。