時代に即したパーソナルオーダー

ビスコテックスでアパレル流通が変わる!
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セーレンがデジタル染色に取り組み始めた当初、デザイナーの先生方からは猛反対を受けました。繊維産業に携わる人たちはアナログの世界で仕事をしてきたため、デザイナーのアナログ的な感性もITに奪われるのではないかと危惧されたのでしょう。「感性までデジタル化するなどナンセンスだし、できるはずがない」と叱られました。

私たちもデザイナーの感性までデジタル化しようと考えたわけではありません。生産工程をどれだけデジタル化しても、デザインにおいては感性が必要です。むしろ、デジタルプリントによって1677万色もの色をコントロールできるようになり、デザイナーの感性を余すことなく表現できるようになりました。しかも、ビスコテックスなら小ロットでの生産が可能です。消費者に支持されるデザインさえあれば、大手アパレルブランドに所属しなくても、デザイナーが直接消費者に服を売ることも可能になり、デザイナーにとってもメリットは大きいと考えています。

ビスコテックスによる次の一手として、お客さまが欲しい服を一着ずつご提供するパーソナルオーダーサービスを展開する予定です。イメージとしては、お客さまには店内に設置したタブレット端末を操作し、豊富なスタイルや柄、配色のデータベースから好みの一着を選び、また店内の大型モニターでバーチャル試着をしていただきます。最終的に選んだ服のデータが工場に送られ、生地の裁断から染色、縫製まで一着ずつ行われるという流れです。等身大での立体的なバーチャル試着を可能にする技術開発には、12年かかりました。この技術によって、スタイルや色、柄、サイズの豊富な組み合わせの中から欲しい一着を自由に選べるバーチャル在庫が可能になりました。

パーソナルオーダーシステムは4月には完成し、その後3~6カ月間のトライアル期間を設け、お客さまからのご意見をもとに改良していく予定です。在庫が不要で、バーチャル試着のためのモニターさえ設置できれば、場所を選ばずどこでも展開できるのがこのシステムの利点です。アパレルブランドや百貨店と組むなど、さまざまな可能性を一つずつ具体化していきたいと考えています。

大量生産から小ロット生産へ、計画生産からオンデマンドのカスタマイズ生産へ、リアルからバーチャルへ。ビスコテックスによって、これまでのファッション流通を変えるのが私たちの夢です。大手アパレルブランドが握っていた主導権を消費者に取り戻し、消費者が着たい服を着る「個人ブランドの時代」を後押ししていきたいですね。工業化社会から情報化社会へと急速に変化するなかで、時代にマッチしたモノづくりを実現するのが、セーレンのビスコテックスではないかと考えています。

川田 達男(かわだ・たつお)
セーレン会長兼最高経営責任者
1940年、福井県生まれ。62年明治大学経営学部卒、同年福井精練加工(現セーレン)入社。87年社長就任。2003年より最高執行責任者(COO)兼務。05年より最高経営責任者(CEO)兼務。05年に買収したカネボウの繊維部門をわずか2年で黒字化させる。14年より現職。セーレン http://www.seiren.com/
(前田はるみ=構成)
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