学歴は私が歩んできた歴史の1つ

「講談は、自分で話す内容を考え、稽古のスケジュールも決めることができます。そこにも、魅力を感じたのです」

講談師の世界は落語と同じく、上下関係は厳しい。師匠や先輩から指示をされたら、まずは「はい、わかりました」と答えるのが、不文律のようだ。凌鶴さんは、こだわりがあるようで力を込めて話す。

「指示に理不尽なものを感じようとも、間違っていると思えようとも、その場では、『はい、わかりました』と返事をすることが大切です。例えば、師匠がエレベーターに乗ろうとしているならば、下に仕える者がボタンを押します。忘れていると、先輩から『お前、何をしているんだ!』と強く言われます。私は、そのようなことで不満を感じたことはないですね」

厳しい上下関係を抵抗なく、受け入れることをできる理由の1つに、立川高校在学中、野球部にいたことを挙げる。この頃に、先輩との上下関係を覚えたのだという。

自らのブログ「講釈師(講談師)・田辺凌鶴」で、作品をつくった背景や披露する会場、日時などを紹介する。それらをみた、全国各地の団体や役所、教会などから、「この作品を披露してほしい」と依頼がある。日時や交通費、謝礼など、条件面などで合意があれば出向く。

最近は、教会から「裁判員制度を扱ったものをお聞かせいただきたい」といった話を受けた。信者の中には、裁判員として裁判に参加したとき、どのような判断をすればいいのか、迷う人たちがいるようだ。教会としてそのことを考慮し、信者たちに、凌鶴さんの作品を聞かせようとしたのだという。

凌鶴さんは、学歴についてこう振り返る。

「立川高校も、中央大学法学部も、私が歩んできた歴史の1つ。講談の世界では、学閥もないし、学歴を意識することもありません。完全な実力主義です。

今は、学歴そのものよりも、同じ高校や大学の出身者のつながりについては、強く思うことがあります。高校や大学の同窓が、お客さんとして会場に来てくれたり、さまざまな応援をしてくれるのです。あらためて、同窓のつながりに深く感謝しています。私は、立川高校や中央大学法学部を卒業することができて、本当によかったと思っています」

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