先行企業にアウェーで太刀打ちできるか

金子和斗志(かねこ・かつし)●アイ・ケイ・ケイ社長。1952年、佐賀県伊万里市生まれ。佐賀県立伊万里高校を卒業後、大手スーパーなどを経て家業のホテル業を継ぐ。1995年にアイケイケイを設立して現職。2010年大証JASDAQ市場に上場。12年、東証二部に鞍替えし、13年に東証一部指定。著書として『サービスの精神はありがとうから生まれる』がある。  アイ・ケイ・ケイ>> https://www.ikk-grp.jp/

日本のウェディング業界は、結婚適齢期人口の減少や晩婚化等を背景に全体として縮小傾向にあったが、旧来の慣習や格式にとらわれないオリジナルな挙式・披露宴志向の高まりの中ハウスウェディングという形態が注目されるようになった。庭つきの欧米風邸宅などをイメージした施設(ゲストハウス)を貸し切り、自宅に招くような感覚でパーティができることで近年人気が高まっている。ハウスウェディング市場は、ホテルや専門式場からシェアを奪う形で大きく成長し、過去10年で約10倍に拡大、推計3000億円超の規模に成長している。

この成長セグメントに対して、数多くのプレイヤーが参入し、店舗展開を競った。たとえばハウスウェディング業界大手であるT&G(テイクアンドギヴ・ニーズ)は、98年に創業後、01年にはナスダック上場を果たし、東京、千葉、福岡、名古屋と大都市を中心に積極的に出店を進めた。同社は、04年には東証二部に上場、アイ・ケイ・ケイが初めて九州外に出店した05年の段階で既に全国29店舗を展開、さらに07年までに58店舗に拡大と、破竹の勢いで急成長していた。

伝統や慣習にとらわれない自分だけのウェディングを望む顧客ニーズに応えるため、施設のデザインも荘厳な白亜の大邸宅風から開放感のある南欧風等々、個性的かつ洗練された施設の中から好みに合ったチョイスができるよう幅広いバリエーションを備えている。 腕利きのシェフの本格フレンチフルコースといった料理もアピールポイント。その他、有名デザイナーのドレス、センスのよい引き出物等々、すべてにおいて最高品質のものを揃えられることが売りだ。

急成長している競合に対し、規模も知名度も劣るアイ・ケイ・ケイに勝ち目はあるのか。地元ならまだしも、九州を出てアウェーで戦うのが厳しいことは想像に難くない。チャンスがあるとすれば顧客のニーズは一様ではないということだ。実際、ウェディング業界には数多くのプレイヤーがいるものの圧倒的シェアを持つガリバー企業はいない。その分、顧客の求めるものを丁寧に見ていけばシェアを大きく伸ばせる可能性もある。

また多拠点に展開するには、それぞれの拠点のマネジメントをする人財(同社では人材を“人財”と表記を統一している)も必要だ。それまで創業オーナー金子社長のリーダーシップに頼っていた同社の人財の層は必ずしも厚くない。店舗展開を急いでも、運営をする人がついていなければ成功はおぼつかない。

こうしたハンディを補いながら自社の強みが生きるよう活路を見出すとしたら、いったいどんな攻め方ができるのだろうか。彼らのとった作戦を見ていこう。