もちろん、ビジネスマン人生には、晴れの日も雨の日もある。私も経験している。1994年、40代半ばで、花形のトレーディング部門から仙台支店に配属された。しかし、私は本来、楽天的なところがある。東北は四季が美しい。風光明媚な観光名所も多く、どこに行っても温泉がある。人情もおだやかだ。東京とは違った環境で働くのもありがたいと考えた。

しかし、視点と思考はローカルに安住せず、世界の動きに対してアンテナは高く張っていた。その頃、石油業法によって原油輸入から精製、販売まで政府の監督の下で保護されていた業界も、徐々に規制緩和が進んでいた。当社も大幅なコスト削減を迫られるなか、2年ぶりに本社に戻った。肩書は変革推進本部のリーダーである。仙台での充電成果を十二分に発揮しようと奮い立ったことを覚えている。

今後、ますますグローバル対応は重要になってくる。社員に「グローバルマインドを持て!」というのはたやすい。だがそれには、日本の伝統と諸外国の文化・慣習を理解しなければならない。コミュニケーションのための語学力はもとより、総合的な教養も必要になってくる。欧米のビジネスマンに比べて、日本人は、この部分が弱い。しかし、商売の話だけでなく、相互の信頼関係を生むのは、そうした人間的な魅力にほかならない。

昭和シェル石油会長 香藤繁常
1947年、広島県生まれ。県立観音高校、中央大学法学部卒。70年シェル石油(現昭和シェル石油)入社。2001年取締役。常務、専務を経て、06年代表取締役副会長。09年会長。13年3月よりグループCEO兼務。

座右の銘・好きな言葉:特になし
座右の書・最近読んだ本
:『論語』など孔子の本
尊敬する経営者・目標とする経営者
:具体名は控えます
私の健康法
:ゴルフ、毎日の腕立て伏せ、腹筋

(岡村繁雄=構成 尾崎三朗=撮影)
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