【永濱】そもそも中国は、生産年齢人口比率が下がってきていますからね。安価な労働力によって経済成長を続けられる時代は終わった、つまり「ルイスの転換点」を過ぎたんです。この転換点では、需要の増加ペースを上回る設備投資など、過剰な投資が行われ、景気が激しく後退します。
転換点を過ぎた新興国は、大胆な構造改革に成功しないかぎり、高度成長から経済停滞に陥るのです。それは過去の多くの国で実証されてきたことでもあります。年内に中国バブルが崩壊する可能性は低いと思いますが、油断は禁物でしょう。
【高橋】となると、現実的なところで日本経済の足を引っ張るのは、原油価格の上昇でしょうか。イラク分断の可能性もある今、このまま混乱が続けば原油が輸出できなくなり、世界的に株価が下がることも考えられます。また、産業によってムラはありますが、原油価格の上昇は確実に生産コストを上げます。それによって日本企業の業績が下がれば、期待されていた業績の上方修正もなくなり、最悪、下方修正というケースもあるでしょう。
【武内】ただ、最近では石油に頼らない産業が増えているので、純粋に生産コストの面だけでいえば、昔ほどの打撃はないんじゃないでしょうか。一般消費者の間でも、「ガソリンが高いから、新車を買うなら燃費のいいエコカー」という流れがありますよね。これ、実は私の話でもあるんですが(笑)。
【永濱】おっしゃる通り。生産コストはもちろんですが、原油価格の上昇によって輸入物価が高騰し、所得が大量に国外に流出してしまうことのほうが大きな問題でしょうね。
【武内】昨年からのウクライナの問題にもいえることですが、地政学リスクがそれなりに大きなインパクトを与える局面が続いていますよね。これは、アメリカが以前のような「世界の警察」的な役割を果たさなくなってきたためでしょう。
アメリカが、どちらかというと世界よりも自国の問題解決に専念したいという姿勢を見せているために、これまで大人しくしてきた国々が自らの欲望をむき出しにしはじめているような気がします。今後、リーダー不在のまま世界が進んでいくとしたら、経済的な混乱は必至。先読みは、どんどん難しくなるかもしれません。中東や中南米、アジアの情勢に関しては、引き続き注目していきたいところです。