ゆるい市民が起こす、「日常の改革」

図書館情報アプリ「Sabota」

JK課が考案した図書館の空席情報アプリ「Sabota」は、まさに市民生活の日常に根ざした一つの成功事例と言っていいでしょう。これまで図書館のWEBサイトでは検索可能だった書籍情報に加えて、個人学習用机の空席状況がビジュアル的にチェックできる手軽なアプリです。アプリのインターフェイス(操作画面)は手書きのイラストで、操作も超単純。必要な機能のみがかわいくシンプルにまとめられています。

このアプリの運用にあたっては、鯖江市と協定を組む地元のIT企業が、机の下に簡易センサーを取り付け、その情報を自治体のオープンデータとして公開し、JK課がつくったアプリで誰でも参照できる。

どんなアプリだったら使いやすいのか、使いたいと思ってもらえるのか、JK課のメンバーたちはパソコンが使えないので、手描きでイメージイラストを描いていたのですが、これがすごくかわいくて、システムの実装を担当していたIT企業の人たちも気に入り、「そのままアプリに使いましょう」と採用になりました。アプリの名称は、「さばえ(Sa)、本=book(bo)、データ=data(ta)」で「Sabota」と名付けられましたが、何よりも、勉強する図書館なのに“サボった”というニュアンスや語感がいかにもゆるくて、女子高生らしい。大人からは決して生まれてこない発想だと思います。これぞまさに「ゆるい市民」による、日常生活のための情報アプリと言えるのではないでしょうか。

彼女たちが「ゆるい市民」として切り取ってくれる日常への問いかけは、どのくらい効果があるのかないのかとか、コストはどうなのかといった、合理性や目的思考に侵されていません。日常のちょっとした面白さや楽しさ、心地よさに、いつも素直に反応しています。特にそれが表れているのが、彼女たちの「おしゃべり」です。彼女たちは普段から、大人に言わせれば一見「どうでもいいようなムダなこと」を延々ぺちゃくちゃとしゃべっています。しかし、ここにこそ本当の正直な市民ニーズが潜んでいるし、大人はこれにちゃんと耳を傾けていかなければいけません。

JK課が実績とともにメディアに取り上げられ、世の中に注目されることは嬉しいことです。しかし、その一方で、彼女たちが自分たちの意志にかかわらず“アイドル化”され、非日常のネタとして一過性で消費されてしまうことは避けなければなりません。彼女たちが「ゆるい市民」として発信する日常への問いかけやメッセージを尊重しには、小さな変化や事例をたくさんつくっていく。そこから新しい相互支援のつながりや関係ができて、地域に定着していく。そして、みんながその環境を楽しみ、好きになっていく。これが、地方の中小都市から実験的に提案できる、『日常の改革』という新しいまちづくりのあり方ではないかと思っています。

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